絶対に集中力が途中で切れると思ってやらないことにしようと思っていたのに、どうしても小野&福岡か木村&井澤か、どちらを見るか決められずマチネ・ソワレとも鑑賞してしまいした。
ジュリエットは小野絢子さんの当たり役と聞いて、最初は小野&福岡回にしようか…と思っていたのですが、結局、木村優里さんのジュリエットもどうしても捨てがたくて。
キャスト表 マチネ / ソワレ(クリックで拡大)
ソワレの小野&福岡はさすが、といった感じでどの場面でも円熟した美しさを感じる踊りでした。
小野絢子さんのジュリエットはこれぞジュリエットそのものといった感じで、動きの端々から生き生きとした可憐さ、可愛らしさが発散されていました。
当たり役というのは納得です。
どのシーンで止めても美しいだろうな、と思える、素晴らしいポジショニングの踊りでした。
ロメオの福岡雄大さんとのパートナリングも盤石で、パ・ド・ドゥでは、ただただ思いあう二人の愛が感じられてあまりにも眩しく、ため息ばかり出てしまいました。
特に、墓所でロメオが仮死と知らずジュリエットと踊るシーンの小野ジュリエットの抜け殻感が秀逸で、とても生きた人間がやっているとは思えませんでした。
しかし、個人的により強く印象に残ったのはマチネの木村&井澤でした。
小野&福岡の2人にはもちろん充実した愛情を感じたのですが、出会った最初からどこか”既に結ばれていた”感があったように感じました。
(まぁ、ゴールデンペアですしね…)
一方の木村&井澤の方がより、衝動的で深い愛が感じられるものだったと思うのです。
勢いがあるというか、突然お互いに沸き起こった、突き動かされるような愛のために、悲劇へ悲劇へとひた走ってしまった疾走感が強く感じられるものであったと思います。
それが観客の胸を強く強く打つものでした。
これが若さの力なのかもしれない、とも思ってしまいました。
相性が良いのか、想像していたよりもパ・ド・ドゥでも非常に息があっていたように思いました。
木村優里さんは、新国立バレエ団の中ではやや外連味強めに見える演技の時もありますが、大きな瞳が表情の移り変わりを非常によく見せていて、こういう演劇的なバレエがあっているのかもしれないと思いました。
ラストのジュリエットの慟哭のシーンあたりでは、気が付いたらオペラグラスを覗きながら泣いてしましました。
井澤駿さんのロミオは、2幕の心を奪われた若者感がとても良く、浮かれてにやにやぼーっとする井澤ロメオにこちらもにやついてしまいました。
2人のパワーの感じられる舞台で、大変良いものを観られました。
マチネ・ソワレのいずれの回のロメオとマキューシオ、ベンヴォーリオのトリオ、ティボルトについては甲乙つけがたく良かったです。
強いて言えば奥村&貝川のマキューシオ・ティボルトの演技が息があっているように見えて個人的には好みでした。
今回のロメオとジュリエット後にプリンシパルになった渡邊さんのロメオを見逃してしまったのをやや後悔しました。
あまりにもステキな貴公子パリスだったので、「ジュリエット…ロメオじゃなくてパリスにしとけばいいんじゃないだろうか…」と思ってしまいました。
また、戸惑いを表現するパリスを見ることが多い中で、怒りも表したような演技はなかなか面白かったです。
また、本島美和さんのキャピュレット夫人の舞踏会の踊りの背中と腕のラインの美しさには惚れ惚れとしてしまいました。
ティボルト死の嘆きのシーンはマチネ・ソワレとも鳥肌ものでした。
激しい悲しみ、怒りが伝わってきてこちらも胸が苦しくなってしまいました。
3人の娼婦役の中では特に寺田亜沙子さんの溌剌とした踊りもとても印象に残りました。
にぎやかで明るく楽し気な街のシーンが、より一層悲劇を引き立てたように思います。
カーテンコールではどちらのジュリエットも、最初はジュリエットが抜けきれない感じだったのが印象的でした。
こちらも物語の余韻に浸ったまま夢見心地で岐路につきました。
マンドリンの衣装がただ一つ、もやもやするものとして私の中に残りました…
踊りはもちろん素晴らしかったのですが、あのもじゃもじゃはなんだったんだろうか…
会場の様子
ちなみに、マチネ回のアンケートに回答したら、
おしゃれな綿棒を頂きました。