不思議の国のアリスは2013年にイギリス本国で見た、個人的に思い入れのある演目です。
まさか日本で見られる日が来ようとは…!
3日公演だけ鑑賞するつもりが、3日公演を見た後にあまりに感動して翌日も勢いでチケットを取ってしまいました。
キャスト表 3日 / 4日
思い出補正もあるかもしれないのですが、両日回ともとてもとても素晴らしかったです。
難易度の高い踊りにカンパニーの総力を結集させて挑み、そして、見事に作り上げたカンパニーの力を感じさせる作品だと思いました。
主役のアリスを踊った2人は、出ずっぱりの鬼のようにハードな演目を見事に踊り切っていました。
小野さんのアリスはひたすら可愛らしく純粋、ジャックとの恋心も強く感じるような演じ方でした。
対する米沢さんのアリスには恋心は淡い感じで、好奇心旺盛な少女といった印象を受けました。
どちらの演じ方も見ていて面白く、それぞれがそれぞれに合った役作りだったように感じました。
(ロイヤルでみたアリスはおぼろげな記憶ながらなんとなく、ちょっと小生意気な少女、といった感じだったような気がします。)
しかしアリス役がこの2人だけとは相当ハード…両日汗だくになっていたアリスを心の中で応援し続けました。
新国立で再演時には4人くらいのアリスでまわしてもらえないかな…。
印象深かったのは3日の本島さんのハートの女王でした。
登場シーンから、トランプ兵4人達をじろっと見る所など、とにかく彼女の目力がいかんなく発揮されていたと思います。
ローズ・アダージョのオマージュ、タルト・アダージョのコメディシーンは、コメディだけに表現力などを大変に要すると思うのですが、吹っ切った感じで演じ切っていて、客席も大変盛り上がっていました。
コメディーシーンだけでなく、美しいアティチュードにも見惚れてしまいました。
イモ虫のシーンでは、キラキラのポアントもちゃんと再現されていたことに感動しました。
3日のイモ虫の宇賀さんもよかったのですが、4日のイモ虫の井澤さんが意外になめらかな動きと柔軟性を要するコンテンポラリーな踊りを見事に踊りこなしていて素晴らしかったです。
彼は王子イメージが強いですが、こういう役もハマるのか、と感心しました。
3日の木下さんが演じた白ウサギも軽快で、ハマりっぷりにも驚きました。
素晴らしいキャスティングだったと思いました。
舞台の端でちょっとしたマイムなどで物語を繰り広げる不思議の国の住人達、また随所に主役級のダンサー達が惜しげもなく登場するので本当に「目が足りない!」と思いました。
幕間の斧、チェシャ猫、映像効果が使用された演出など、イギリスで見たシーンと全く変わらないことに謎の懐かしさと感動がこみあげて、胸がいっぱいになり目が潤んでしまいました。
演目的にもキャッチーですし、バレエを観たことがない人でも、ちょっと見てみようかな、と思えて、楽しく満足できる演目ではないかと思います。
初めてバレエを観る入り口として、この演目は万人におススメできそうだと思いました。
逆に、バレエ鑑賞を繰り返ししている人が何度も見に行く演目かというと、そうではないかもしれません。
個々の踊りの印象がやや薄いように感じており、個人的にはリピートは厳しいような印象を受けました。
(その点は、やはり古典は強いなぁと思いました。)
1度見れば十分というか、演者が変わったら観に行ってみようかな、という程度かもしれません。