18

18

ju-hachi

2020/2/27 ジゼル[パリ・オペラ座バレエ団] 感想

パリ・オペラ座バレエ団のジゼルを観てきました。
来日公演初日、ジゼルがドロテ・ジルベール、アルブレヒトマチュー・ガニオです。
 

 

キャスト(クリックで拡大)

casts

261回目の公演とのことです。

 

 

 

 
突出してここ、という強い感動が得られた場面はなく、想像していたよりは(また、チケットのお値段に対しても、)普通だったかな、と思いました。
安定した舞台で満足感は得られました。
主役2人はそれぞれ存在感があり、舞台を率いていくような力を感じました。
 
1幕、ドロテ・ジルベールのジゼルはとっても可憐でいじらしかったです。
本当にちょっとした、上目遣いだったり、首を少しかしげる動作だったりが愛らしくて素敵でした。
狂乱の場面も決して大げさだったり演技過多ではなく、抑え目な感じだったのが個人的に良かったです。
(狂乱の場面、パリ・オペは髪の毛は全てほどくわけではなく、まとまった髪の状態のままにするのですね。)
 
 
2幕のウィリとなったジゼルは、顔色も青白く、体温が感じられないような抜け殻の死人のようでした。
それでも、端々の目のやり方や動作から、アルブレヒトへの愛情がわずかに残っていて、その感情が彼女を突き動かしていると感じられたのが非常に素晴らしいと思いました。
どの場面でも彼女の腕が作り出す空間が非常に美しく、アルブレヒトを優しく包む腕は慈愛に満ち溢れていました。
とてもクリアに、雑味なく踊るので、それがまた人間っぽくないように見えました。
 
後ろ向きで袖へと消えていく音のしない高速パ・ド・ブレは圧巻で、また、パ・ド・ドゥでサポートを受けてアラベスクでトントンと進み、方向を転換してまたアラベスクで進む、といったシーン、方向を切り替える瞬間が本当に宙に浮かんでいるようなこの世のものと思えない浮遊感で、素晴らしい精霊っぷりでした。
 
 
マチュー・ガニオのアルブレヒトは、登場した時から美しすぎました。
村人の振り、全くできていないよね?と思ってしまうくらい貴族らしいノーブルさが漂う様子なのですが、ちょっと上から目線で横柄というか、傲慢そうな感じが動作や表情の端々で表現されていて、演技が細かいと思いました。
 
2幕はマチュー・ガニオに黒マントと白い花があまりに似合いすぎていてため息が漏れました。
もう語彙力がなさすぎますが、ただ美しいです。
どの場面でも後悔や苦悶の表情を浮かべるのですが、それが大げさでなく、演技が自然でした。
 
 
ミルタへ許しを請う場面、彼はアントルシャ・シスではなくソ・デ・バスクを繰り返す形に変えていて、(ちょっと寂しいな、と思いましたが、)回数を重ねて断られ続けることで徐々に絶望していく様子が伝わり、この形も面白かったと思いました。
 

ラスト、お墓の前で目覚めたアルブレヒトは、白い花を一輪手に、舞台の方へ掲げつつゆっくりと歩いて幕となりましたが、初日のこの時は、アルブレヒトの胸のあたりに1輪の花がくっついてしまっていました。

多分、偶然のことだと思うのですが、アルブレヒトの心にジゼルがこの花のように残った、というようなイメージを勝手にしてしまって…個人的には大変良かったと思いました。

 
 
全体的に、パリ・オペのダンサー達は誰も彼も洗練された動きで、特にどの場面でも5番に深く入れて決める所が格別に思いました。
2幕よりは1幕の村のにぎやかなシーンの方が良かった印象です。
 
ペザントは、フランチェスコ・ミュラの足捌きは素晴らしかったですが、2人ともいかんせん小柄で、踊りもやや小さく見えてちょっとイマイチでした。
(大変失礼ですが、マリーヌ・ガニオはお化粧が濃い目で怖かったです。。)

 

サイコロ博打をしているところにウィリがなだれ込んでくる場面が恐怖をあおられる感じで好きでした。

オニール・八菜のミルタは踊りから重々しさがかなり良く表現されていて、ウィリ達に命令を下す場面はもちろん、立っている後ろ姿に威厳が感じられるようだったのが特に良かったと思いました。

 

パ・ド・ブレも滑らかで、床が動いているのでは、と思うような滑らかさでした。

ウィリ達の踊りもまとまっていて、衣装のフワフワ感もとても美しかったですが、全体的にポアントの音がうるさく、ちょっとバタバタした様子だったように思いました。

 
 
「美しいものを観た」という実感はあるのですが、なんだか全体的にはぼんやりとした印象でした。
少し残念だったのですが、この状況で上演してくれただけでも、と思います…。