Kバレエカンパニーの「海賊」を見てきました。
5月予定の公演がコロナで延期→座席数減のため再販売という紆余曲折を経て、やっと鑑賞にこぎつけました。
5月の公演のチケットを取った際も、お目当ては今季で退団という中村祥子さんを見たい、と思ったからだったのですが、奇しくも18日公演は中村祥子さん、遅沢佑介さん、両プリンシパルの退団ラスト公演となりました。
18日のチケットはそれはそれは争奪戦で…flashplayer使用のチケットサイトに翻弄されつつ、1時間粘ってやっとチケットを手に入れました…いや、取れてよかった…。
渋谷Bunkamuraには「ボーイズ・イン・ザ・バンド」鑑賞以来の訪問でしたが、相変わらず感染症対策は徹底していました。
入場時の手指消毒、足マットでの足消毒?、チケット半券は自分でちぎり、食事は禁止、休憩時間は扉解放しての換気…などなど…
座席も1席おきのまま、追加販売なしで両隣空状態でした。(収益的には心配ですが…正直なところ安心して鑑賞できました。)
退場もアナウンスで誘導される形で2段階での退場でした。
1階席の22列?ぐらいまでと2階席、1階席の23列?以降と3階席、といった分け方だったですかね。
帰りは普段は使用していない?と思われる出口も開放してくれていました。
また、(これはコロナ対策?なのか微妙ですが、)オーケストラなしで過去公演の録音音源使用の公演でした。
あと、コロナ対策関連も含めて、場内アナウンス、すごく長かったです。
客席での会話はお控え下さい、花束、プレゼントお断り、ダンサーへの手拍子もご遠慮くださいなどなど…
(手拍子、なんか問題あったのですかね。「感動のお気持ちは、拍手で頂戴できますと幸いです」とまでアナウンスされてて、正直何事かと思いました。)
キャスト変更もあって、アナウンスする人も大変だったのではないでしょうか…
17日ソワレ キャスト表
※キャスト変更 ケガのため、ランケデム:髙橋裕哉→栗山廉
Kバレエの海賊は、熊川再振付版でストーリーや音楽にかなりアレンジが加わっていると聞いていましたが、他の「海賊」よりもストーリーの違和感が少なく、よりわかりやすく楽しめる内容だったと思います。
思っていたよりも演劇的な部分も多く、身振り手振りのおかげで筋のわかりやすさが増していたように感じました。
セットも衣装もとても豪華でこだわりを感じました。
市場のシーンのセットもよかったですし、特に女性の衣装はどのシーンでもカラフルで豪華だけれど派手すぎず、キラキラ~っとしていてステキでしたね。
セットは、特に印象的なのは初っ端の地図の紗幕、海賊船のセット(マストが折れる演出まで!)。
このシーン、とてもワクワクしました。
ただ、豪華なセットの転換は割と時間がかかるのか、幕中の舞台転換ではちょっとテンポが悪く感じる部分もありました。大変なんでしょうけどね…。
この公演の一番お目当ての、メドーラを演じた中村さんは本当に素晴らしかったです。
強靭なテクニックで1つ1つのポーズも美しく、ピタッと止まり、回転にも全然ブレがありませんでした。
踊りも勝手に想像していた程クセというかアクのようなものがなく、優雅でした。
あと、Kバレエの女性ダンサーほとんどにも言えますが、ふくらはぎの鍛えられ方がとんでもなかった…
熊川振付は鬼ステップが多いようなので、これぐらい鍛えられてないと踊れないんでしょうかね…
この回、グルナーラを演じた結城さんはスタイル抜群で、中村さんと並ぶシーンは本当の姉妹のようでした。
伏し目がちな様子が薄幸感満載で、グルナーラぴったりだったと思います。
ソリストになって間もないようですが堂々とした踊りだったな、と思うのですが、1幕後半、最後までポワントで回り切れなかったりするシーンが目立ちました。
何だか不調だったのかしら?
ケガでもしてそうな感じがして、ひとまず2幕は踊っていたので安心したのですが、結局翌日キャスト変更になっていましたね。
どこか痛めたのでもなければいいのですが…。
グルナーラに関して、1幕のグルナーラのソロの曲がエスメラルダだったので、実はちょっとびっくりしました。ボリショイ版などだとこの曲になるようですね。
マリインスキーとかで見るバージョンだとグルナーラのソロは割と明るい曲調だったと思うのですが、このシーンにはちょっと悲しげな旋律のこの曲がぴったりだなぁ、と思いました。
オダリスクのパ・ド・トロワはもう美女ぞろい過ぎてまぶしかった…。
ランケデムの、急きょ代役となった栗山さんは、うーん、ちょっと上半身を伴わず腕だけ振り回している踊りのような感じがしてしまいました。
コンラッドの遅沢さんも、危なげのないどこか貴族っぽいような上品な踊りだったのですが、やはり上半身があまり動かないタイプだったように感じました。
伊坂さんのアリは、いぶし銀のように感じられる、古くからの忠臣的な雰囲気でした。
力強い踊りでよかったのですが、全体的にちょっと私としてはアリのキャラクターがつかめないような感じに思えました。
この熊川版ラストのアリの死は結構衝撃でした(好みではありませんでした。そこまで悲劇的にしなくてもという気が)。
熊川氏はアリには一層思い入れがあるんでしょうね。活躍のシーンも見せ場も、盛りだくさんでした。
海賊達の踊りはKバレエの男性ダンサーの層の厚さを感じました。
この日、昼公演でプリンシパル昇格となった堀内將平さんも海賊の踊りにも入っているというなんとも豪華仕様の海賊の踊り、力強くて見ごたえありました。
録音音源ではありましたが、思っていたよりも違和感なかったです。
過去公演のものを使っているからでしょうかね。
しかし、この回は、なんだかトラブルが多かったですね。
キャスト変更もありましたし、市場シーンで金袋が落ちてしまってメドーラがあわや踏んづけそうになってヒヤヒヤしたり、洞窟シーンでダンサーの帽子が落ちてしまって、男性ダンサーがすかさず拾っていたり、2幕のメドーラの被ったベールがすぐ落ちちゃったり…
ちょっとヒヤヒヤさせられました。
さて、翌日18日公演、名演だったと思います。
生で見れて本当に良かったです。
18日 キャスト表
※キャスト変更 ランケデム:髙橋裕哉→石橋奬也、グルナーラ:結城亜美→小林美奈
キャスト表に反映されていたのでびっくりしました。いつ刷ってるもんなんでしょうかね。
この日、私が特に良かったと思ったのがグルナーラの小林美奈さんでした。
小柄なので、熊川設定の中村メドーラの姉、という雰囲気には欠けましたが、ステップ、ジャンプが大きく、全身を使った踊りがすごく素晴らしかったです。
1幕の踊り、市場のシーンで円形の台で踊るシーン、腕の動きが目立つシーンですが、背中も良く動いていてとても美しかったです。
ランケデムとのパ・ド・ドゥの所、余裕で3回転はしていましたね…。
表情も豊かで可愛らしく、溌剌とした踊りでした。
いや、他の公演でも観てみたいです。
高橋さんのランケデムも力強くこのキャラクターに合っていたように思います。
この2人の踊りで、1幕から熱くなれました。
また、この日、アリを演じた山本さんの踊りや演技もとてもよかった。
昨日の伊坂さんよりもより少年っぽい感じというか、内に秘めた、しかしすごく熱い忠誠心が感じられるような、キャラクターがはっきりと演じられていたと思いました。
特にソロでは上半身がとても美しく良く動いて跳躍も高くて…躍動感ある生き生きとした踊りがよかったです。
ビルバントの宮尾さんと、アリ、ランケデムの3人の踊りのシーンがとてもよかったです。
ランケデムの遅沢さん、この日は絶好調でしたね。
ソロも気合の入った踊りで、跳躍も昨日よりも随分高かったのではないか、と感じました。
メドーラの中村さんも、心なしか昨日より溌剌とした踊りのように感じました。
出だしの跳躍も昨日より高かったような…
メドーラ・コンラッド・アリのパ・ド・トロワ、最高でした。
昨日の公演のようなハラハラさせるトラブルも無く、熊川版海賊を堪能できました。
間違いなく名演を見たな、と思いました。
公演終了後は、カーテンコールがやみませんでした。
昨日の公演はカーテンコール途中で帰っている人も見受けられましたが、この日は誰1人帰ることなく、公演終了のアナウンスを遮っても皆が拍手を送り続けていました。
その後、舞台上には熊川氏も登場!
退団する中村祥子さんに花束を渡し、遅沢佑介さんとは握手を交わしていました。
また、舞台上にはスタッフや、この日のキャストではなかったダンサー達の姿なども。
花束を受け取った中村さん、遅沢さんもですが、他のダンサーたちも泣いていて、長年カンパニーを支えてきたであろう2人の存在の大きさを感じました。
観客も総立ちで、延々と拍手をし続けていました。
やっと観客が退場の段になったら、多くの人がハンカチで目をぬぐう姿が…
皆さんやっぱり感動しましたよね…いや、本当に感動的でした。
退場中も幕の向こうからはダンサー・スタッフたちのものと思われる拍手も聞こえたりしていました。
この公演、2回も生で見れて本当に良かったです。
欧米の状況などを考えると、こんなことできて本当に幸せだなぁ…と思ってしまいます。