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ju-hachi

2020/12/5 くるみ割り人形[Kバレエカンパニー] 感想

Kバレエカンパニーの「くるみ割り人形」を見てきました。

もうあっという間にこの演目の季節ですね。早い。

 

何年も前からやっている熊川版、私は初見でした。

先日の「海賊」がとても良かったのと、小林美奈さんの踊りをもう一度見たい、と思って、早い段階で水曜公演のチケットを取っていたのですが、なんと、水曜日の回、完全に忘れてすっぽかしてしまい…しかもそれを翌日の朝になって気が付くという…

なんてことを…(見たかっただろう方たちに大変申し訳ない…)

慌てて、運よく残っていた土曜日のチケットを追加で取りました。。。

 

結果的に11月頭にキャスト変更(結構大幅な入れ替え…)があり、水曜日の回では目当ての小林さんが見れなかったし、運よくほぼ残りのなかった土曜のチケットも取れたので、自分としては良かったことにしようと思います…

 

キャスト

casts

 

事前リサーチで、Kバレエのくるみは、どうやらねずみと人形の国が領土争いしてるとか、ドロッセルマイヤーが重たい使命を背負ってるとか、世界一硬いくるみを割らなきゃとかなんとか、かなりストーリーが作りこまれているということはわかっていましたが、細かいところ分からなくても話の筋は何となくわかる感じです。

(パンフレット購入を大変迷いましたが、3000円はお高くて、手が出せなかった…)

 

海賊に続き、今回もオーチャードホール市松模様の座席配置でした。

ただ、今回はシアター オーケストラ トーキョーの生オケつきでした。

 

 

 

出だし、序曲はなんだかテンポがゆっくり目の演奏で、個人的には好みでありませんでした。

演奏が始まってすぐに幕が上がり、英語で「くるみ割り人形」の文字と、ねずみや兵隊、時計などが描かれた紗幕があらわになります。

この序曲中、紗幕越しに、マリー姫がねずみに襲われ、ねずみに変えられてしまう、というプロローグ的なシーンが挟まります。

このシーンは序曲を止めて、ねずみ登場シーンの曲を入れ込んでいると思うのですが、序曲がここでぶった切られてしまうのも、私はあまり好きではなかったです、くるみの序曲、好きなので…。

あと、紗幕越しなので単純にちょっと見づらかったです。

 

序曲後は、シュタールバウム家のパーティーシーン。

セットや衣装がとても豪華でした。

子ども達の踊りはジャンプだらけでにぎにぎしい感じで飽きませんでした。

踊っている方はすごく疲れそうだわ、と思ってしまいました。

 

パーティーでは妖しげなドロッセルマイヤーが手品を披露しますが、ここ、結構派手な手品を披露していて純粋に手品に驚いてしまいました。

一般的なくるみで、子どもたちが出し物の人形等を見る、というシーンは、王と王妃、マリー姫、ネズミ、兵隊といった人形が出てきて、これから先の物語の筋を見せるような劇中劇にアレンジされていました。

ここ、踊っていたのはKバレエスクールの生徒さんたちらしいですが、小さい子が頑張ってて可愛かったです。

 

ドロッセルマイヤーがくるみ割り人形をクララに渡して、それをフリッツが壊してしまって…と、ここら辺の筋は、だいたい一般的なくるみとあまり変わりません。

この、クララに渡されるくるみ割り人形の顔、今まで見たくるみの中で個人的にはトップクラスにめちゃくちゃ怖かったです。

だいたいくるみ割り人形ってかわいくないですけど、これは歯ががっつりみえみえで「笑うセールスマン」みたいな人形で…クララ、本当にそれ、欲しい…?

パーティーシーン、ドロッセルマイヤーは、一般的なくるみと比較するとかなり踊るシーン多めでした。

 

パーティー後、夜中、ネズミに襲われるクララは、くるみ割り人形を連れていくネズミを追って、自身も大きな時計の中に入ります。

この時計というのが、時計職人になりすましているドロッセルマイヤーがクララの家に運び込んだといういわれ付きの時計らしく、時計の中をくぐり抜けた先は人形の国へつながっています。

 

この、時計に入った後~雪のシーンまでの舞台転換、そして踊りがとても素晴らしかった。

まず、人形の世界であることを示すように周囲のものが巨大化していく、という舞台転換が、曲の盛り上がり、リズムにも合わせて非常にダイナミックに行われます。

思わずため息が出ました。観客からは拍手も。

 

兵隊とねずみの戦いのシーン、大砲も出てくるし、実際に弾は飛ぶし、ちゃんとくるみ割り人形にも弾が当たるし、コミカルなんですが、見ごたえがあります。(これ、ちゃんと弾が当たらなきゃいけないの難しいのではないでしょうか…?)

 

戦いの後、負傷したくるみ割り人形が王子に変身し、王子とクララとドロッセルマイヤーのパ・ド・トロワです。

ここの踊り、クララを高く放り投げたりリフトもかなり高難易度に見えました。

パ・ド・トロワの後、背景にあった灰色?銀色?のたなびく幕がパっと落ちると、一瞬でキラキラの雪が降り注ぎ一面銀世界、まるでスノードームの中のようです。

ここでも観客から拍手が。

また、その雪の量たるや、最終的には最後にソリが出てきますが、そのソリが通った跡が残って見えるほど降り注いでいました。

(1幕後の休憩では掃除機?で雪を吸い取っている音が随分長時間聞こえました。)

 

この舞台転換の様子もすごいのですが、この雪のシーンの踊りがまたすごかった。

オーケストラは序曲のゆったりとした感じと打って変わって捲し立てるようにアップテンポで、そのカウントを倍取りせずに完全に音の通りのカウントで雪の王、女王のソリストと、コールドの粉雪が踊ります。

最初の序曲のもったりしたテンポ、このシーンのこのアップテンポのためだったんでしょうか。

ここのコールドの、凄まじいテンポでも一糸乱れず、次々とフォーメーションの変わっていく踊り…大迫力で、もう、この場面は永遠にみていたかったです。圧巻でした。

 

ただ、この雪のシーンのコーラス?合唱が残念ながら録音なのですが、合成音声みたいに聞こえてちょっと気持ち悪くて気になってしまいました…普段なら生のコーラスなんでしょうかね…。

あと、1幕の踊りはどれも動きっぱなしで、ダンサーの1つ1つのポーズを楽しむ部分が少なかったなぁと思いました。

 

 

2幕は、幕開けにねずみとの戦いが続き、クララが例のクラカトゥクくるみという硬いくるみを敵のねずみの王が持っていた武器で割ると呪いが解け、マリー姫登場、ディベルティスマン、と続いていきます。

ここで、大抵は各国の踊りの最後に踊られる「花のワルツ」が最初に踊られます。

この花のワルツにクララも絡んで踊り、演技が入ることで、ディベルティスマンが続く部分の物語的な違和感が軽減されるような演出だったので、とても面白いなと思いました。

 

各国の人形の踊り、ディベルティスマンの見どころは、やはりロシア人形ではないでしょうか。

ダイナミックな跳躍とコサックダンス、とても見ごたえがありました。

あと、アラビアの踊り、成田沙弥さんがプロムナードするパがとても美しいな、と思いました。

 

マリー姫と王子の踊りは、今回の個人的な目当て、小林美奈さんがやっぱりとっても素晴らしかったです。

海賊の時は力強さを感じる踊りでしたが、今回のくるみではすごく軽くてエアリーな踊りでした。

ポアントで長く立っているので浮遊感があり、一つ一つのポーズがとても美しかった。

 

王子の栗山廉さんは顔が小さくて本当にスタイルが王子ーって感じです。

マリー姫とのユニゾンのところや、跳躍、サポートはうまいなぁと思ったのですが、海賊の時にも感じましたが、個人的に上半身というか腕を振り回してしまっているように見える気がして、そこが好みではありませんでした。

 

マリー姫、王子とのパ・ド・ドゥでは、最後のコーダの前にドロッセルマイヤーとクララのパ・ド・ドゥが入ります。

この2人の踊り、かわいかったです。

(予期せず2人の踊りが入って多少びっくりしましたが、違和感はそこまでありませんでした。)

 

マリー姫と王子のパ・ド・ドゥ、コーダの後は人形達勢揃いのフィナーレ。

フィナーレの踊り、人形たちの踊りが見せ場たっぷりですごく楽しかったです。

ここも音楽がどんどん軽快に、アップテンポになっていく感じがとても好きでした。

 

最後、カーテンコールも、ロシア人形が大ジャンプで登場したり、何度目かのカーテンコールでねずみたちも登場してチーズをかじっていたり、ユーモアたっぷりで面白かったです。

 

 

濃い世界観で、もうお腹いっぱい、という感じです。

ストーリーも奥深いですし、演出も、バレエをあまり見ない人でも違和感なく飽きずに見てもらえそうに思いました。1幕は特に。

逆に、一般的なくるみを見慣れている方が、改変にいろいろと抵抗を感じやすいかもしれませんね。

また、ぜひこのKバレエの雪のシーンは見に行きたいな、と思います。