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ju-hachi

2021/9/18 International Choreography × Japanese Dancers ~舞踊の情熱~ 感想

International Choreography × Japanese Dancers ~舞踊の情熱~ を観てきました。

様々な振付家の作品が見られてとても楽しく、構成も素晴らしい公演でした。

踊りの合間合間に解説ムービーがあり、より作品の理解も深まりました。

丁度、2020年1月に見た、「輝く英国ロイヤルバレエのスター達」と同じような構成でしょうか。良かったです。

 

timetable

第1幕は『二羽の鳩』まで上演でした。

 

 

『ステップテクスト』  Steptext
振付:ウィリアム・フォーサイス  William Forsythe
演出・振付指導:アントニー・リッツィー  Antony Ritzy
出演:スターダンサーズ・バレエ団(渡辺恭子、池田武志、石川聖人、林田翔平)

※石川聖人→関口啓にキャストチェンジ
STAR DANCERS BALLET (Kyoko Watanabe, Takeshi Ikeda, Masato Ishikawa, Shohei Hayashida)
音楽:J.S.バッハ  Johann Sebastian Bach

 

公演開始のベルは鳴らず、劇場の案内アナウンスが終わった後におもむろに舞台上にダンサーが登場し、踊り始めます。客席は、少し薄暗いながらも明るいまま始まり、途中で急に暗くなり、最後にまた明るくなったりします。

(こういう演出の作品なんでしょうけど、開始があいまいな演目の時はできるだけ早めに案内をして、落ち着いた状態にしてくれると嬉しいような気はしました…)

バッハの音楽が、曲の一部、一瞬だけ流れてブツッと切れたり、流れたりする作品で、いったいダンサーはどうやって合わせて踊るのかと不思議でした。

腕の動きが特徴的で、巻き戻しのような、早送りのような動きが繰り替えされていたのが印象的でした。

スターダンサーズ・バレエ団のダンサー達は、とても踊り慣れている感じがしてとても良かったです。皆さん動きが滑らかで連続性があり、美しかったです。

解説ムービーの中で、フォーサイスは100作ったうちの95%はあっさり捨ててしまって、残りの5%だけにしてしまう。最後は全く違う作品になっているという話だったり、作品は多面体、ブリリアントカットされたダイヤモンドのように、見る人によっていろんなものが見える、という話が印象的でした。

 

※※上演されず※※

ソナタ』  Sonata
振付:ウヴェ・ショルツ  Uwe Scholz
出演:中村祥子、ヴィスラフ・デュデック  Shoko Nakamura, Wieslaw Dudek
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ  Sergei Rachmaninov

 

残念ながら上演されませんでした。解説ムービーは流されました。ウヴェ・ショルツは、仕事の仕方が変わらず、命を削って振り付けをしている。バレエ音楽ではない、普通の音楽、クラシックやポップ、色んな作品を使い、作品のインスピレーションは音楽から得ており、音楽をビジュアル化している。その音楽を聴いた時に何を伝えたいか、何を言いたいのか、という考えで作品を作っている、というような解説だったと思います。

ぜひ見たかったですね…

 

『二羽の鳩』よりパ・ド・ドゥ  The Two Pigeons
振付:フレデリック・アシュトン  Frederick Ashton
出演:島添亮子(小林紀子バレエ・シアター)、厚地康雄(バーミンガム・ロイヤル・バレエ団)  Akiko Shimazoe, Yasuo Atsuji
音楽:アンドレ・メサジェ、編曲:ジョン・ランチベリー  André Messager, John Lanchberry

 

観られるかなーと思ったのですが、鳩は飛びませんでした。島添亮子さんの踊りは初めて拝見しまいたが、よく説明ができませんが、日本人が踊ってるなぁーという印象を受けました。静かで繊細で、非常に上品。厚地さんがあまり踊るシーンがなくて残念。

 

『A Picture of You Falling』より 
振付:クリスタル・パイト  Crystal Pite
出演:鳴海令那(Kidd Pivot)、小㞍健太  Rena Narumi, Kenta Kojiri
音楽:オーエン・ベルトン  Owen Belton

 

3月に、新国立の「舞姫と牧神たちの午後」で、小㞍健太さんと湯浅永麻さんのペアで同じ抜粋部分を拝見したばかり。スクリーンに、舞台上で話されるセリフたちが一度表示されました。

やはりダンサーが違うと受ける印象が違いました。3月は、2人の争いのような印象を受けたのですが、今回はちょっと抑え目?何故だか悲し気な印象を受けました。今回のダンサー2人とも踊りの連続性と滑らかさは素晴らしかったです。

 

マ・パヴロワより『タイスの瞑想曲』  Thais
振付:ローラン・プティ  Roland Petit
出演:上野水香東京バレエ団)、柄本弾(東京バレエ団)  Mizuka Ueno, Dan Tsukamoto
音楽:ジュール・マスネ  Jules Massenet

 

解説ムービーで、プティの振り付けは、バレエを見たことが無い人にもすべてのステップに物語性があり分かりやすい、また、この作品は男性は女性をずっと持ち上げてばかりだ、という解説がありました。その通り、男性は女性をほとんど持ち上げてばかりで…上野さんと柄本さんはは組んで踊ることが多いことかとても息があっていて良かったです。なんとなく、美しい女性の幻影と踊っている男性、というような物語のような印象を受けました。

 

スパルタクス』よりパ・ド・ドゥ  Spartacus 【日本初演/Japan Premiere】
振付:デヴィッド・ビントレー  David Bintley
出演:佐久間奈緒、厚地康雄(バーミンガム・ロイヤル・バレエ団)  Nao Sakuma, Yasuo Atsuji
音楽:アラム・ハチャトゥリアン  Aram Khachaturian

 

ビントレーは音楽とストーリーを重視しており、ストーリーが無いものでも裏付けのあるダンスが作られていて、その時の社会情勢など、ビントレー自身の中でどうなったかという点が現われている、という解説ムービーがあったと思います。

スパルタクスはそもそも断片的にしか見たことがないのですが、スパルタクスとフリーギアのパ・ド・ドゥで、フリーギアは妊娠中、という設定のようです。いつかビントレー版の全幕を見てみたいです。

音楽との一体感が良い振り付けだなぁ、と思いました。野性味のある厚地さんが見られて良かったです。ぜひ、いつか彼が踊る全幕を見てみたいです。佐久間奈緒さんは引退されているらしいですが、とてもそうは思えず…ピタっと止まったポーズを見せる振り付けが多かったのですが、そのどれもが美しかったです。

 

『椿姫のためのエチュード』  La Dame aux Camélias
振付:モーリス・ベジャール  Maurice Béjart
出演:中村祥子  Shoko Nakamura
音楽:フレデリック・ショパン  Frédéric Chopin
編曲:フランツ・リスト  Franz Liszt

 

解説ムービーによると、全幕は作られなかったけれど、この作品だけは残った、夕食の時にこの作品を作るという話が出たらしく、「夕食の振る舞いが(マルグリットと?)似ていたのかしら?」と、言っていたのが印象的でした。

椅子一つと、ユニタード姿の中村さんが座っている所から始まります。ピアノ曲の後、オペラが流れてそれと合わせての踊り。多分、マルグリットが死ぬシーンでしょうか。どうやらアルマンは現れず、ただただ一人死んでいくのかな。繊細な一つ一つの動きが美しく、中村さんにとてもピッタリの踊りでした。

 

『M』 
振付:モーリス・ベジャール  Maurice Béjart
出演:池本祥真(東京バレエ団)  Shoma Ikemoto
音楽:黛敏郎  Toshiro Mayuzumi

 

小林十市さんにアレンジされた、『M』と『ザ・カブキ』の振りがミックスされているようで、21年ぶりの復活とのことでした。いやー、これ、本当に素晴らしかったです。これだけの動きをこの長さでノンストップでできるダンサー、とても稀有じゃないでしょうか。池本さんの、動と静の動き、跳躍も、ブレの少しもない動きがずっと、どの瞬間も美しかったです。舞台がとても狭く見えました。もう一度見たいです。

 

ラストは、この日の出演者全員で「火の鳥」を踊られました。

『M』終了後のカーテンコール直後に池本さんが舞台に横たわる。背景の太陽の陽を後ろから浴びるようにして、出演者たちが2列に並び、柄本さんが一人先頭に立って登場する、というのがもう圧巻で。火の鳥が復活するシーンでしょうか。

粋な構成で、とても感動的でした。

 

台風の影響を心配しましたが、劇場に行き帰りする間はほとんど降らずに済んで良かったです。