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ju-hachi

2022/1/14 ニューイヤー・バレエ[新国立劇場バレエ団] 感想

今年も新国立のニューイヤー・バレエを観てきました。

昨年は涙のオンライン配信となった新国立のニューイヤー・バレエ。

今年もこの感染状況で数々の公演が中止に追い込まれるなか、こちらの公演は3日間無事に上演しきって本当によかった…

本当は土曜日の別キャストでも見たかったのですが、仕事のため断念。

しかし、速水さんは今回も降板…復帰が待たれます…

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キャスト

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『テーマとヴァリエーション』

【振付】ジョージ・バランシン

【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

思いがけず米沢さんと奥村さんという珍しいペアが踊ることになり、とっても楽しみにしていたこの演目、いやー、素晴らしかったです。

パンフレットにも記載がありましたが、幕開けから出し惜しみなく?プリンシパル2人が踊りますし、最初から最後まで怒涛の踊りの連続で、片時どころかまばたきすらできないような程、展開にくぎ付けでした。

米沢さんは、手を支えられて足を上げてポーズを取る所が、サポート不要で完全に自立してるのでは?と思うぐらい、ピタっと決まっておりました。感嘆。ソロ部分はキレのあるパが小気味よくどれも美しかったです。さらに、奥村さんがサポートが上手だからか、米沢さんがとても踊りやすそうに見えて、パ・ド・ドゥでより一層輝いて見えました。この2人のパ・ド・ドゥ、なんだか一連のとても「完璧」な動きを見ている気持ちになるくらい、素晴らしかったです。もっとこのペアの踊りも見てみたい。

群舞も、ややリズムから遅れるような場面がありましたが、どこをとってもため息がでそうなほど美しかったです。最後のクライマックスあたりでは感動して泣いてしまいそうになりました、プロットのないアブストラクトバレエで泣いてしまうとは…

 

ペンギン・カフェ

【振付】デヴィッド・ビントレー

【音楽】サイモン・ジェフス

こちらは昨年オンラインでも配信があった作品ですが、今年、生で見られて良かったです。何よりも音楽が生で聞くとやはりまた雰囲気が違いました。思ったよりも静かで温かな音楽だったんだなぁ、と思いました。

 

初っ端のペンギンの着ぐるみ、配信の時はあまりわからなかったけど、被り物や衣装がツヤツヤしていて、ぴょこぴょこ歩くのがたまらなく可愛いかった。

チケットを寄付して、頂いてしまった新国立のカレンダーの1月がペンギン・カフェの写真で嬉しかったのですが、去年も書いた気がするけれど、このペンギンちゃんのキーホルダーが欲しいです。グッズにならないかな。

ユタのオオツノヒツジが男性ダンサーの千手観音状の手を背負って出てくる所は今回もくすっときました。配信の時のヒツジは米沢さんで、今回は木村さんでしたが、なんとなく米沢さんの時の方が好みのヒツジだった気がしました。

テキサスのカンガルーネズミは長くて激しい振りが続く、持久力の必要な踊りで、本当に見ているだけで息がきれそうなほど、まだ踊るの?まだ終わらないの?と思いながら見ていました。これ踊るの、本当にキツいだろうなぁ…。

豚鼻スカンクにつくノミの所は、昨年の配信の時は声を出す部分は舞台袖から発声する的な話がありましたが、今回はどうだったのかわからずじまい。

ケープヤマシマウマは、これがさっきあのテーマとヴァリエーションを踊っていたのと同じ人だろうか、と思ってしまうほど、奥村さんの踊りの幅の広さを感じました。ゼブラガールズは、一瞬、群れのメスととらえることもできるのだろうか?とも思ったけれど、あのスタイリッシュ感からするとやはり毛皮を纏った女性達ととらえるべきでしょうか。そう思うとかなり残酷…。ユタのオオツノヒツジ役はゼブラガールズに配役されることになるんですね。去年の配信の時も米沢さんがゼブラガールズにおり、何か事情があるのかと思ったのですが、今年も木村さんがゼブラガールズに配役されていたので、そういうことになっているのでしょう。

熱帯雨林の家族は、この回は小野さんがやや不調な感じがしました。

ウーリーモンキーは、福岡さんのダイナミックさ、軽快さ、動きの大きさが圧倒的でした。

雨が降ってからの展開は、配信の時と変わらず目が足りず。舞台奥の暗闇でペンギンがそっと立ち、じっと展開を見ている様がなんとも言えません。五月女さんと福岡さんのペアの踊りがあったのが一番の見どころ。配信で見た時も一緒だった気がしますが、キレキレでアクロバティックで素晴らしかったです。

ラストのカーテンコールで、ペンギン役の広瀬さんがずっとペンギン的な歩き方、立ち止まり方をしているのが最後まで可愛かったです。後は、幕の間からジャンプで飛び出してきてくれたウーリーモンキーの福岡さん!とっても客席が盛り上がりました。

 

全体としては楽しく見たわけですが、一度この演目を見てしまってからだと、見ている間にふと気が付くと、我々はこうして生き生きと踊る愛らしい動物達をこの世から失ってしまう危機に追いやっているのだな、と、申し訳ない気持ちになるような気がしました。箱舟にのれなかったペンギンのような動物をわれわれはこれ以上増やすのか、それどころか、われわれ人間ですら箱舟にのれない存在となるのではないか…正しい見方なのかわかりませんが、そのようなことを思いながら今回は鑑賞しました。

そんないたたまれない気持ちになるという点もあるかもしれませんが、どうもこのペンギン・カフェは何度も繰り返しみたいような演目には感じないのですよね。可愛いですけど。むしろ去年のような広く一般向けとして無料配信するには非常に向いた作品だったのではないかと今回改めて思いました。