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ju-hachi

2022/7/5 キエフ・バレエ支援チャリティーBALLET GALA 感想

草刈民代氏企画のキエフ・バレエ支援チャリティー公演へ行ってきました。

公演チケットは抽選で、来場者全員無料ですが、当日1人5000円以上の寄付を募り、全額寄付という公演。

草刈氏の熱いコメント入りの超豪華なパンフレット付き、コンテンポラリーからクラシックまで色とりどりの演目、そしてとんでもなく豪華な出演者!だったので、割と良いお席が当たって本当に嬉しかったです。多分ですが、1階席の割と近くの席で、草刈氏が舞台を鑑賞されていたのもお見掛けしました。

どれぐらいチケットへ応募があったのかわからないですが、抽選に外れた方は結構いたんでしょうか?

チケット代無料だからかやや空席も目立つような感じだったので、行けなくなった方は外れた方に権利を譲渡、とかができると良かったのですが…

 

<<上演作品&キャスト>>

デューク・エリントン・バレエ』より The Opener(振付:ローラン・プティ
水井駿介(牧阿佐美バレヱ団)

『薔薇の精』
中野伶美(シビウ劇場バレエ)
二山治雄

『海賊』より グラン・パ・ド・ドゥ
芝本梨花子(デンマーク王立バレエ)
猿橋賢(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)
福田昂平(元ノヴォシビルスク・バレエ)

『グラン・パ・クラシック』
佐々晴香(スウェーデン王立バレエ)
髙橋裕哉

『And...Carolyn.』
大谷遥陽(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)
松井学郎(ノルウェー国立バレエ)

『Deep Song』(振付:マーサ・グラハム)
佐藤碧(マーサ・グラハム・ダンス・カンパニー)

ノートルダム・ド・パリ』より パ・ド・ドゥ(振付:ローラン・プティ
青山季可(牧阿佐美バレヱ団)
菊地研(牧阿佐美バレヱ団)

『ジゼル』より アダージョ
加治屋百合子(ヒューストン・バレエ)
平野亮一(ロイヤル・バレエ)

『小さな死』
藤井彩嘉(チェコ国立バレエ)
江部直哉(カナダ国立バレエ)

『二羽の鳩』(振付:フレデリック・アシュトン)より
佐久間奈緒(元バーミンガム・ロイヤル・バレエ)
厚地康雄(元バーミンガム・ロイヤル・バレエ)

『祈り』(アメリカン・バレエ・シアター版『コッペリア』より)
加治屋百合子(ヒューストン・バレエ)

『森の詩』
アンナ・ムロムツェワ(キエフ・バレエ)
ニキータ・スハルコフ(キエフ・バレエ)

 

 

 

デューク・エリントン・バレエ』はオープニングに相応しいような、ノリの良く、自分で頭を叩いて沈んでいくとか、手だけ別に動いているみたいなコミカルな振り付けの入った楽しい演目でした。曲の中にも拍手が入っていてたりして自然と盛り上がりました。水井駿介さんの軽やかなステップや回転のキレがよかったです。

『薔薇の精』は、もう二山さんにピッタリすぎました。軽やかでしなやかで、柔軟性の高い跳躍は本当に精にしか見えなかった。中野さんはすごーくかわいらしかった。表情がくっきりと見えて演技が分かりやすく、ストーリーを強く感じることができました。彼女が踊る部分はやや短めですが、ポードブラが美しかったです。

『海賊』のグラン・パ・ド・ドゥは、メドーラとコンラッドのパ・ド・ドゥからはじまっており、パンフレットによるとこの部分はドリーブの曲に田中祐子氏の振り付けのものとのこと。全幕のストーリーを想像できるように、という粋な演出で、芝本さん、猿橋さんが丁寧にストーリーを描きだしていたと思いました。定番のグラン・パ・ド・ドゥでは福田さんのアリが大技キメキメ。ソロは弾け飛びそうな勢いのある踊り、コーダは540を2連続入れるなど、大いに盛り上げていました。芝本さんは肘あたりから手先までがヒラヒラとした感じで動くのがとても素敵で、アラベスクで伸ばした足がすっと伸びたままだったのが印象的。しかし、パ・ド・ドゥ2連続をこなした芝本さん、猿橋さんの体力よ…。さすがに芝本さんはグランフェッテ32回転はなく、途中から違う振り付けでした。

『グラン・パ・クラシック』は、ダンサー2人のポーズの美しさを堪能しました。佐々さんの踊りを初めて見ることができたのですが、首と肩周りにできる空間が何ともいえず美しかった。ポードブラもそうですが、アチチュードにした背中のラインも見惚れてしまいました。ポーズが一つ一つ美しいのでどの振り付けもなんとも簡単にステップをこなしているかのように見えました…。髙橋さんはKバレエを退団されてすぐだと思うのですが、早速踊りを観ることができて良かったです。音に合わせてきっちりと決める所も良かったですし、高橋さんもポーズが一つ一つ美しかったです。

『And...Carolyn.』は、松井さんが特に上半身の動きが自由に感じられました。大谷さんも、お名前だけは知っていたのですが、今回踊りを見られて良かったです。2人とも上下に、左右に引っ張られているかのような、エネルギーほとばしるような動きが見れました。

『Deep Song』マーサ・グラハム振付の踊りをマーサ・グラハム・ダンス・カンパニーの佐藤碧さんが踊られるという、日本では非常に珍しい上演なのでは、と思いながら見ました。縦しまの入ったモノクロのロングスカートという衣装がかなりインパクトがあって、踊りの中でひらめく動きなどでとても印象的に見えました。音とシンクロした振り付けで、フレックスにした足にものすごい存在感を感じました。パンフレットによるとスペイン内戦などに絡めた作品のようなのですが、長椅子の下にダンサーがもぐって椅子を縦にして持ち上げ、それを背負う、という部分がラストにあって、それがなんとなく棺をかついでいるシーンなのかな、という気持ちで見ていました。(全然違うかもしれませんが…。)

ノートルダム・ド・パリ』のパ・ド・ドゥは、先日牧で上演された際の、私が見に行った回のキャスト違いの2人。青山さんは脚が美しいダンサーで、悪くはなかったのですが、個人的には青山さんも菊地さんも表情がトゥーマッチに感じました。

『ジゼル』のアダージョは加治屋さんと平野さんの豪華ペア。平野さんの来日が直前となったため、かなり短い部分の上演となったとのこと?で、ちょっぴり残念でしたが、よくぞこの難しいパ・ド・ドゥをこの時間だけで合わせられたなとも思います。何度見ても、平野さんのサポートにかかると本当に相手役が宙に浮いているとしか思えなくなるのが凄くて、今回も、見ているうちに地面とポアントが本当に接しているの??と思ってしまいました。

『小さな死』はキリアンの振り付け作品。目まぐるしく変化をしていき、いつの間にか2人の体勢が変わっていく踊りが面白かったです。

この後のラストまでの『二羽の鳩』、『祈り』、『森の詩』の演目の並びは、平和への祈りが込められた演目選びでしょう。感動的でした。

『二羽の鳩』は、佐久間さんと厚地さんの、他の公演でも観たことのある盤石ペア。今回は本物の鳩が登場していました。白い鳩に平和の想いがこめられているのでしょう。鳩さんたちがあまり想定通りの動きはしなかったのもご愛敬。ラスト、厚地さんが舞台袖でくつろぐ鳩を捕まえてカーテンコールという可愛らしい場面で観客もほっこりしました。

『祈り』は、そもそもガラ公演では上演が珍しく、また今回は本来のコッペリアの祈りとは文脈が変わった感じでしたが、加治屋さんの柔らかな踊りと、温かく優しいような音楽が平和への祈りを強く感じられました。あと、アメリカン・バレエ・シアター版『コッペリア』の衣装も素敵でした。最後、カーテンコールはなく、最後の演目へ繋がれ、ラストの『森の詩』はキエフバレエのアンナ・ムロムツェワ、ニキータ・スハルコフの2人よって踊られました。

『森はの詩』音楽、台本、振付がすべてウクライナ人による作品ということです。ダイナミックな振り付けで素晴らしく見ごたえがありました。衣装が、特に男性は民族衣装モチーフなのか…?白い衣装に水色の刺繡が入っていたのが可愛かったです。アンナ・ムロムツェワは、以前キエフ・バレエで見た時よりも踊りが洗練されていた気がします。おそらく回転が得意なのだと思うのですが、舞台上を斜めに回転しながら進む場面は相変わらずの安定っぷりでした。ニキータ・スハルコフは力強く、美しい上半身がよかったです。ぜひ、いつかこの作品を全幕を見てみたいと思いました。このような素晴らしい踊りが、文化が、この先も失われずにいて欲しいと、平和を祈らずにはいられませんでした。

 

カーテンコールは曲(海賊の夢の場の曲だった気がします)に合わせて全員が登場しましたが、2羽の鳩を踊った佐久間さんと厚地さんが2人とも鳩を手で持って登場。最後には草刈氏も登場し、ヒマワリの花束?を渡されていたと思います。

多分、かなり短い期間で企画・実施されたのではないかと思うのですが、草刈氏の企画力、素晴らしい。観ることができて大変幸運でした。