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ju-hachi

2022/8/13 NHKバレエの饗宴2022 感想

NHKバレエの饗宴を鑑賞してきました。

いやー、すごい舞台でした!これは後々バレエファンたちが語り草にするような公演なのではないでしょうか。

素晴らしい演目の取り合わせ、素晴らしいダンサー達、そして生オケ、こんなに素晴らしい公演が見れて感無量です!

チケットもS席はかなりの激戦だったと思います…チケット発売日は震えながら良席が取れることを祈りましたが、S席が取れて良かったです…

 

program

cast change

 

Variations for four(バリエーション・フォー・フォー)
振付:アントン・ドーリン

音楽:キーオ

出演:

厚地康雄(元英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル
清瀧千晴(牧阿佐美バレヱ団プリンシパル
猿橋賢(イングリッシュ・ナショナル・バレエ ファースト・ソリスト
中島瑞生(新国立劇場バレエ団アーティスト)

 

女性4人で踊るパ・ド・カトルに男性4人で踊るこの演目を持ってくるというこの演目の選び方、素晴らしいですね。

最初はヒューストンバレエの吉山 シャール ルイ・アンドレさんがキャスティングされていたのですが、ケガで出演されず、猿橋賢さんにキャストチェンジされていました。

宇宙っぽいような背景に、黒マントに包まれてたたずむ4人の男性がバサッとマントを脱いで始まる、というかっこいいオープニングのこの演目、プログラムによると地・風・火・水の4元素がそれぞれのダンサーが与えられているらしいとのこと。

ストーリーは無く、特にラストのコーダは4人の男性で回転だったりの技の競い合いのような感じという演目でした。

うーん、これはもうちょと技巧派なダンサーたちに合う演目だったのでしょう。かなりハードで難しい踊りだと思うのですが、ちょっと踊りこなせていないなぁという感じが目立ちました。

この中では、清瀧千晴さんが技巧派でいらっしゃるのか、まだ踊るの?まだ?と思ってしまうくらいながーいソロを踊りこなせてらっしゃるように思いました。猿橋さんや、厚地さんも悪くなかったです。中島さんは表情が硬くて…プレッシャー?この面々だとかなり圧倒されてしまうのも無理なさそうですが…

もう少し別の人たちが踊るのも見てみたかったです。

あとは、厚地さんのスタイルが良すぎて目が向いてしまうので、同程度のスタイルの人4人で、というのもかなり重要な気がしました…

 

Pas de quatre(パ・ド・カトル)
振付:アントン・ドーリン
音楽:プーニ
出演:

中村祥子(Kバレエカンパニー名誉プリンシパル
水谷実喜(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)

菅井円加ハンブルク・バレエ団プリンシパル
永久メイ(マリインスキー劇場バレエ団ファースト・ソリスト) 

 

超話題だったとんでもない超豪華キャストのパ・ド・カトル。

当初は金子扶生さんまでキャスティングされていた演目でしたが、その後、小野絢子さんにキャストチェンジ、更に水谷実喜さんにキャストチェンジ、と、キャストチェンジは続いたものの…あまりの素晴らしさにもう言葉になりませんでした。

バレエファンの夢が現実になってしまったんですねこれは。

観客の拍手もすさまじく、会場中がこのパ・ド・カトルを楽しみにしていたんだろうなというのがひしひしと伝わりました。

背景にかの有名なパ・ド・カトルのポーズの画像とともに、同じポーズを取る4人のダンサーたちが登場、という演出があり、古式にのっとり…ではないですが、やはりソロを踊る順番は年齢順でした。

もう4人のダンサーみなさん…指先からつま先まで神経が張り巡らされた踊りは圧倒的でした。

中村さんの優雅さと気品が素晴らしく、若手スターダンサー達をそろえただけでなく、更に中村さんがこの演目にキャスティングされていることでとても締まっているのだなと思わせられました。

菅井さんは登場からしばらくはなんだか雰囲気が違ったからか最初は全然わからなくて…髪型が違うからかな?と思ったのですが、この踊りに合わせたような、柔らかな雰囲気づくりがピッタリできていたのでしょう。ソロの上体の傾け方というか、沈みこみっぷりは、これ菅井さんにしかできないのではないでしょうか…

水谷さんも跳躍が軽やかで、体重を感じさせず。

そして永久さんは…もう妖精でしかありませんでしたね。ジゼル風な上品な髪型で、軽やかで清楚で、アラベスクの時の足の長さにはため息。やわらかく動く手の長いこと……白いバレエが似合いすぎました。

個人的に、2年半ぶり程の永久メイさんの踊りが見られて、もう感涙です。最近、踊っていらっしゃるところすらほとんど観ることができない状況になっていたので、彼女の踊りを、しかも生で鑑賞したのは本当にもう…感動でした。

推しの過剰摂取はほどほどにしないといけません…

 

牧神の午後への前奏曲
振付:平山素子
音楽:ドビュッシー
フルート:高木綾子
出演:

小㞍健太
柴山紗帆(新国立劇場バレエ団ファースト・ソリスト
飯野萌子(新国立劇場バレエ団ソリスト

 

フルート独奏とともにニンフ2人が登場し、まるでフルート奏者まで演者のよう。柴山さんの上体反らしっぷりが美しく…夢のようにはかなく消えていくニンフたちが表現されていたような気がしました。

小尻さん演じる牧神は、そのニンフを求めているのでしょうか。鏡がたくさん舞台上に現れ、それがマジックミラーなのか、ダンサー自身を映していたり、鏡の後ろの人物を透かせて、そっと登場するニンフ役2人を幻影のように見せ、かと思えば舞台上に幾何学的な影を落とす装置にもなっていたり…舞台装置の妙が効いた演目でした。

テレビ放映が控えていますが、ここら辺の装置の面白さが活きるような放送だと良いですね。

 

ウェスタン・シンフォニー
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ケイ
出演:スターダンサーズ・バレエ団

 

バランシン的な構成でありつつも、とても陽気で、演技も入って何となくストーリーも感じられるような楽しい演目でした。

衣装がとても可愛い!西部劇風の衣装で、女性は超ミニスカートに黒タイツ黒ポアント、男性もカウボーイ風?

とてもバランシンっぽくない気がして、個人的にバランシンで見るならこれ以外の演目が良いのになぁ…とも思いましたが、さすがバランシン、空間の使い方が面白いというか、正面向きでも踊っているのだけど、正面向きだけで踊っているように見えない振り付けがとても面白いなぁと思いました。個人的にはアラベスクの女性を回転させるために走りまくる男性ダンサーという振り付けがや、後ろ向きにダイブする振付が印象的でした。

ラストはダンサー全員が回り続ける中、幕が下りていく、というのも盛り上がる演出でした。

パ・ド・ドゥを踊った4組の中では塩谷さんが特に、スタイルから踊りまで素晴らしかったですね。軽やかでした。池田武志さんも印象に残りました。

 

「ロメオとジュリエット」からバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:レオニード・ラヴロフスキー
音楽:プロコフィエフ
出演:永久メイ、ビクター・カイシェタ

 

夢にまで見た演目でした…この2人のラヴロフスキー版ロミジュリのパ・ド・ドゥをまさか日本で観れるとは思いませんでした…本当にありがとうございました。

永久さん、あのシンプル衣装がここまで素敵に見える人、他にいるんですかね??可憐を具現化したら永久さんのようになるのでしょう。もう、存在だけで舞台映えが過ぎて、このレベルまでくると衣装の装飾なぞいらんのだな、という謎の気持ちになりました。そして、2年半前、永久さんを見た時よりも表現力は相当に増しており、儚くも可憐なジュリエットそのもの。踊り方の正統派マリインスキー感も抜群。

ヴィクター・カイシェタ氏の踊りを観るのは2回目?3回目?くらいだったと思うのですが、跳躍が高く、相変わらず意外なほどに踊りがノーブルなのが良かった。演技も悪くありません。

しかし、鑑賞中にここまでラヴロフスキー版を踊れた2人が、今現在、マリインスキーを離れ、ロシアを離れざるを得なかったという悲しさを感じて、気が付いたら涙が出てしまっていました。

 

ドン・キホーテ」からグラン・パ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー
音楽:ミンクス
出演:菅井円加、清瀧千晴

 

もう円加様…円加様が最高でした。パ・ド・カトルでみせた可憐さが、この演目は打って変わってキリっとした雰囲気にかわっていて、別人かと思ってしまいました。彼女の十八番ではないか、という演目だと思うのですが、大技だらけってわけでもないのに魅せてくれます…!片足で立つポーズはもう、永遠に自立してらっしゃる感じがしましたし、ソロVaのラストの足捌きは、もう軽やかで軽やかで、浮いてましたねあれは。フェッテも連続ダブルをいれつつ余裕を感じさせるほどでもう叫び出しそうなくらいかっこよかったです。

清瀧さんは、菅井さんをひたすら立たせるような感じい思えたのが印象的でしょうか。とても良いサポートだったなと感じました。いや、ご自身も十分素晴らしい踊りだったので、もっと目立ってくださってもよかったような…

 

Andante(新作)
振付:金森穣
音楽:バッハ
バイオリン:小林美樹
出演:中村祥子、厚地康雄

 

男女2人が柔らかい照明に照らされながら、舞台上ですれ違い、やがて交錯しながら、身に付けた白い衣装を脱ぎ捨てて行き、ユニタードとなってさらに踊る…という演出。

これは若いダンサーには絶対に踊れない踊りでしょう。円熟した2人のダンサーだからできるような深みを感じました。じわじわと感動をそそるような演目でしみじみと穏やかな、どこか切ないような気持ちになりました。

 

 

ジゼルのパ・ド・ドゥを踊る予定だった倉永美沙さんが来日できなくなってしまったのも残念でしたが…素晴らしい公演でした…!

そういえば、会場で永久さんのお母様もお見掛けした記憶がありました。

台風が来ている中で少し心配ではありましたが、なんとか風雨もそこまで強くないままで済みましたし、何よりもなんともすごいものを見てしまってふわふわしながら帰宅しました。

来年の公演も、ぜひ、ぜひ期待しております…!!