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ju-hachi

2020/1/25 舞台『アルトゥロ・ウイの興隆』 感想

KAAT神奈川芸術劇場で草彅剛主演の舞台、アルトゥロ・ウイの興隆を見てきました。

ヒトラーが独裁者として上り詰めていく過程をシカゴのギャングの世界に置き換えて描いた、という作品です。

 

キャスト表(クリックで拡大)

casts

 

 
なんといってもアルトゥロ・ウイに草彅剛さんをキャスティングしたことが抜群に良い!と思った舞台でした。

 

正直なところ、草彅さんは歌が凄く上手なわけでなかったですし、セリフの発声や滑舌もあまりよくなくて、よっぽど周りの役者さんの方がうまかったのですが、舞台上では他の役者を圧倒する程の凄まじい存在感があり、スターのオーラのようなものを強烈に発散させているというか、気がつくと吸い寄せられるように目がいってしまうような不思議な力を持っていました。

(だから草彅さんはこんなに人気の主演役者なのだ、と思いますが、)草彅さんが演じたアルトゥロ・ウイはまさに、その立場に必要と思われる才などにすこぶる優れているわけではないと思われるのに、なぜかカリスマ的に周囲を惹きつけてその立場になってしまう、というキャラクターで、草彅さんの持ち味(のようなもの)そのものといっても良く、だから、彼を通してウイというキャラクターの存在を強烈に納得する事ができてしまうのだなぁ、と思いました。

 

 

観客=大衆で劇の一部、という演出なのですが、特に1階席には演者が客席までやって来て、観客とともに大衆となるような場面があり、余計に没入感が感じられそうでした。

 

観客はかつてヒトラーが行った、暴力と脅迫とで散々やりたい放題、ムチャクチャをやって、人々を征服していく経緯をまさに舞台で見ていくのですが、一方で、その出来事から目をそらさせるように、ド派手なバンドとダンサーとセクシーなウイが歌い踊る熱狂を見せられ、またそれに熱狂させられることを強いられ、更には従うか死か、という二択をも迫られて…そうやって、当時、ヒトラーに屈服し、服従し、取り込まれていった(そうならざるを得なかった)民衆はこんなだったのか、と恐ろしさを味わえるように思いました。

 

私は3階席だったので、1階席を俯瞰してどこか第三者的に恐いなぁと思っていた感じだったのですが、別の座席で視点を変えて見てみるのもおもしろそうでした。

 

もしももう1回この舞台が見られるなら、今度は1階席で自分がどう感じるのか知りたい、と思います。