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ju-hachi

2021/12/3 舞台『アルトゥロ・ウイの興隆』 感想

大変運よく、昨年に続きチケットを取得でき、アルトゥロ・ウイの興隆を再度鑑賞してきました。

時間が経ってしまいましたが、とりとめもないメモぐらいでも残しておきます。

 

キャスト

キャスト

timetable

 

メインキャストはほぼ昨年上演時そのまま。

昨年鑑賞した際は、できたら今度は1階席で再度見たいと思っていたのですが、結局また1階席は取れず…もちろん、人気公演のチケットを取れただけで運が良いわけではありますが…残念。

それでも前回よりは近い2階席での鑑賞でした。

 

今回は、とにかく怖かったです。観客が。

終盤、観客=聴衆となってウイの演説を聞く場面で、皆さん手を、あのヒトラー式に率先して嬉しそうに(私には見えた)様子で普通に上げるんですよね。いや、怖かったです。どうしても私は皆さんが手を上げられてしまう心理が理解できなくて…。架空の、舞台のことであることはもちろんわかっているのですが、それでも少しも手を上げるような気持ちになれず…左右きょろきょろもじもじしてばかりで、完全にあの場の中では不審者でした。

昨年鑑賞時は3階席だったし、遠目で傍観者的な視点だったな、と自分で思っていたのですが、多分去年の方がまだ手を上げてノリノリになれそうなくらいの心理状態だったかもしれません。初見の歌と踊りとに圧倒されて、やっぱりあてられてたんだろうな。

今回は2度目で、もっともっと冷静だったのだと思います。本当に"熱狂した大衆"というものを見たような気がして、背筋が凍るようにぞっとしながら帰りました。

 

舞台演出などで昨年鑑賞時と目立って違ったのは、冒頭が、登場人物全員マスクをしての登場だったことでしょうか。ご時世的な注意を含めての口上があってから、ウイの登場で幕開け、でした。昨年は1階客席通路から舞台上にヤジを飛ばすような演者がいるという演出があって、これはどうなるんだろうと思っていたら、舞台前方に演者が集合してヤジを飛ばすような形の演出に変わっていました。また、客席を演者が通る際はマスク、舞台上ではマスク無し、というような形にしているようでした。

 

 

草彅さんは、昨年鑑賞した際と変わらずのカリスマ性、いえ、さらにパワーアップし、ヒトラーが憑依しているかのような演技・ダンス・歌に圧倒されました。

昨年見た時よりも抜群にセリフが自然に出てくるような感じがして、活舌が改善されているような気がしました。セリフがすごく聞き取りやすくなっていて、前半のヤクザっぽいしゃべり方と後半の演説のシーンでの口調の違いも際立ちました。コミカルなシーンはよりコミカルに、シリアスなシーンはより感情が際立ってわかり、物語へより入り込めました。

ラスト、アンコールの時にしばらく笑顔が出ないような様子だったのが、何度かして優しい微笑みになったのが印象的。草彅さん本人に戻るまでに時間がかかってるという感じで、やっぱり本当に舞台の最中は憑依していたんじゃないかな…。

本筋とは関係なく、休憩に入るときに「休憩しまーす」と言ってばたーっと倒れ込んで、別の人に運ばれていく様子がすごくかわいかった。

 

今回、茶番のような裁判のシーンあたりで光るライトをぐるっと回す時に流れる曲が、ショパンの葬送行進曲の一部であるということに今更ながら気が付きました。ショパンポーランドと言えば、ナチスによるユダヤ人迫害についてはこの劇ではあまり触れられていないですよね…。今更ながら気になりました。今作は1941年にブレヒトが書き上げた戯曲とのことですが、ユダヤ人迫害がより苛烈となるにはまだ少し早かったのか…。

 

今回も鑑賞後、大変考えさせられました。

次回が、もしあれば、ぜひ今度こそ1階席でみたいものです…。

あと、もう少し舞台上に出てくる解説文が読みやすくなると嬉しいのですが…なかなか難しいのかな…。