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ju-hachi

2022/6/12 ノートルダム・ド・パリ[牧阿佐美バレエ団] 感想

パリオペ退団したてのステファン・ビュリオン出演のノートルダム・ド・パリを観てきました。きっと彼が日本で公演をすることは、もう無いのではないでしょうか…本当に、彼を呼んでくださってありがとうございました。

本当だったら、デニス・ロヂキンとアンジェリーナ・ヴォロンツォーワがキャスティングされていた、自分的超豪華公演だったのですが…まぁロシアの侵攻でキャスト変更なりそうだなぁーと思っていたらやっぱり、といった感じでした。関係者の皆さんも、それはそれは大変だったでしょう…

 

timetable

 

<<キャスト>>

ステファン・ビュリオン 
Stéphane Bullion パリ・オペラ座バレエ団 エトワール 
スザンナ・サルヴィ
Susanna Salvi ローマ歌劇場バレエ団 エトワール 
アルマン・ウラーゾフ
Arman Urazov 国立アスタナ・オペラ・バレエ団 プリンシパル・ダンサー
ラグワスレン・オトゴンニャム
Otgonnyam Lkhagvasuren

 

ノートルダム・ド・パリは映像では見たことがありましたが、生で見たのは初めて。映像で見たよりも群衆の群舞がとても迫力が感じられて、特に1幕の民衆はサンローランの鮮やかで個々人でまちまち色が違う衣装を纏っているのに、なぜか一体感があって非常に不気味で異様な感じがしたのが印象的でした。群舞が踏みならす音も効果的に使われていて、奇跡小路の群舞、聖堂に押し寄せる群舞からもすさまじいエネルギーを感じられました。人間が舞台セットのように動いたり、登場人物の感情も表したりする群舞というのが、プティ作品を観るとやっぱり印象に残ります。

あとは、オーケストラの、特に打楽器の生音も迫力がより増して聞こえてとても良かったです。全体的に同じリズムや旋律が繰り返されるような音楽でしたが、フロロが悩まされるタンバリンの音がするシーンの音楽は、終演後も頭から音楽が離れず自分までフロロ状態になったような気持ちに…。

舞台セットは簡素だけどかなり大きいセットが少しづつ移動して変化していく形で、このセットにより、2幕13場もある作品なのにほとんど暗転もなく物語が進行していくのが面白かったです。背景の、線だけで形作られたちょっと歪な形のノートルダム大聖堂の形をみると、この建物は消失してしまったんだよなぁ…となんだかしんみり。

 

ステファン・ビュリオンのカジモドは、動きが制限されている中でも上半身の動きがとても美しく見えて素晴らしかったです。メイクや、ぎこちない動きなどの見た目の醜さと裏腹に、にじみ出る心の美しさが感じられるようだったのが素晴らしい表現力だなぁと思いました。(もしかしたら彼の人柄がにじみ出ているのかもしれないなぁとも思いますが…)

エスメラルダのスザンナ・サルヴィもとても演技がよくて、フェビュスとのシーンとカジモドとのシーンでみせる表情の違いも素晴らしかったです。カジモドとエスメラルダのパ・ド・ドゥは今作の中で一番印象的でした。スザンナ・サルヴィは脚も美しくて、プティ作品をみるとやはり脚が感情表現の手段なのだろうなと思うのですが、それを堪能させてくれる素敵なダンサーでした。

フェビュスのアルマン・ウラーゾフもチャラそうというか軽そうな感じが実にぴったり。(どうしてエスメラルダはフェビュスとくっついちゃうんだろうか。)フロロのラグワスレン・オトゴンニャムも、牧のダンサーとのことでしたが、ゲストダンサーに負けない迫力がありました。

作品全体に聖と俗、生と死、善と悪、美と醜、光と影…とたくさんの対比があり、一方によって一方が際立つような、そんな作品のような気がしました。