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ju-hachi

2022/7/16 キエフ・バレエ・ガラ2022 感想

キエフ・バレエ・ガラに行ってきました。

多少は、ウクライナへの支援になるかしら、といった気持ちで鑑賞を決めたのですが、公演チケットもあっという間になくなっていっていたので、きっと私のような気持ちで鑑賞を決めた人も多かったのではないかと思いました。

光藍社のサイトによると、”ウクライナ国立歌劇場は、ウクライナ文化省からの要請により、チャイコフスキーほかロシア人作曲家の楽曲の演奏及び使用を控える事を決定致しました。これに伴う劇場からの依頼により、今夏の日本公演につきましては、該当演目を外すことになりました。”ということで、そういうプログラムになったようで、なかなかガラ公演でお目にかかる機会の少ない演目が多かったです。構成を決めるのはかなり大変だったことでしょう…

 

cast

 

全体的に正直な所を申し上げれば、踊りはやや粗が目立ちましたし、演目途中でダンサーの疲労が見える所なども多かったです(初日最初の公演だったはずなのですが…この後の公演大丈夫だろうかと心配に…)。あと、もしかしてパ・ド・ドゥはなかなかこのペアで練習するのは難しかったのかな、といった感じがしました。

でも、ダンサーがみんなホント夢のように美しいスタイルなんですよね…信じられないほど長い手足の動きを見ているだけでも夢心地でしたし、この大変な状況で新作まで上演するとは…本当に素晴らしいことです。

しかし、この日の客席からは、ちょっとでも大ジャンプが入るとすぐに拍手が起こっていて、うーん…となりました。そこまで拍手しなきゃだめかしら?曲芸を見ているわけではないのだけどなぁ…とちょっと気になりました。

 

幕開け最初の「ゴパック」は、ひまわり畑の背景に、鮮やかでカラフルな民族衣装をまとった男女が村のお祭りみたいな感じで舞うという演目でした。初っ端登場した男性4人が踊るところはさながらダンスバトルみたいに次々と大技が続き、近くの客席から歓声があがっていました。観客の心を掴む、見ていてとても楽しい演目だったのですが、これダンサーは相当体力削られたのではないでしょうか…。

次の「ラ・シルフィード」のパ・ド・ドゥは、シルフィード役のアレクサンドラ・パンチェンコのなめらかなポールドブラが美しかったです。ジェームズの衣装は緑色で、踊ったアンドリー・ガブリシキフはもう少し上体が安定してほしかったような気がしました。

「ディアナとアクティオンのグラン・パ・ド・ドゥ」のディアナの衣装は、ムロムツェワの信じられないような長い手足が映えるので、その強烈とまで思えるようなスタイルについついため息が漏れました…。先日の草刈氏企画の公演ではあまり気にならなかったのですが、やや踊りの大味感が目立ちました。アクティオンのニキータ・スハルコフの踊りは良かったと思いました。

前半最後の「海賊」第2幕より花園の場は、花輪のコールド付き。メドーラを踊ったカテリーナ・ミクルーハが、脚がまっすぐでまたすごいスタイルと可愛らしい容姿の持ち主で…いやぁ、ムロムツェワを初めて見た時もかなり衝撃だったですが、個人的には彼女もそれに匹敵するぐらいのインパクトのある容姿でした。でもアレクサンドラ・パンチェンコが相手役ならカテリーナ・ミクルーハがギュリナーラ役の方が良かったような気がしました。アレクサンドラ・パンチェンコの踊りはシルフィードの時同様軽やかでした。衣装が綿あめみたいな淡いピンクと紫の衣装で夢の中感があって非常に可愛かったです。カテリーナ・ミクルーハの衣装も明るい青色でこれも素敵でした。踊りの方は、最後の方疲れが見えたのが残念…あと背中の筋力不足と引き上げ不足なのかな?と思ってしまいました。いやーでも彼女は本当に素晴らしい容姿の持ち主です。今後に期待。

葉加瀬太郎のヴァイオリンの曲にのせた「ひまわり」は、カラフルなカラードレスで踊られていましたが、爽やかな作品だったのですが、これはちょっと、個人的には学芸会の創作ダンスを見ているような気分になってしまいました。もうちょっと曲が違ったら良かったのかなぁ、と…有名すぎる曲だから、曲に最初から持っていたイメージが強すぎたかもしれません…

「サタネラのグラン・パ・ド・ドゥ」はカテリーナ・ミクルーハとマクシム・パラマルチュークのペアで、もう2人の見た目が可愛らしすぎました。今回のガラの衣装は全部素敵だなぁーと思ったのですが、この演目の衣装もパキータのトロワっの衣装ぽいような、シックな感じがとても良かったです。マクシム・パラマルチュークは最初はかなり動きが大きくて跳躍も高かったのですが、最後の方はアンディオールが甘くなったりしていてスタミナ切れだったような気がしました…カテリーナ・ミクルーハは、前半で踊っていたメドーラよりもこちらの役の方がキャラがあっていて自然だったような気がします。

エレーナ・フィリピエワが踊った「瀕死の白鳥」は、今回のガラの白眉でしょう。最初に背中向きで登場しながらのポードブラ、腕の信じられない程細かで滑らかな波打ちといったら…脳裏に焼き付いてなかなか離れません…。さすがにポアントで立つポーズ等で脚が高く上がることはないのですが、背中・腕・手先まで、上半身の動きの美しさに目が釘付けになりました。決して挫けることのない強さ、平和への祈りがこちらにも伝わってくるような…そんな気がして涙ぐんでしまいました。

最後の「バヤデルカ」第2幕より抜粋は、ガムザッティの結婚式の場面の上演。(ここら辺は個人的にはダンサー全員の体力を非常に心配して観てしまいましたが…)華やかなシーンで心躍りました。化粧の時間がないからか、そもそも塗らないようになっているのか正確なところはわからないですが、ブロンズアイドルはゴールドっぽい全身タイツという装いでした。ソロルニキータ・スハルコフの踊りがダイナミックながらも美しく、前半に続きこの演目でもとても良かったです。ムロムツェワのガムザッティは出で立ちが神々しすぎて、これに対抗できるニキヤはなかなかいなかろう…と思ってしまいました。あれだけ長い脚でイタリアンフェッテをほとんどぶれずに軽々と踊っていたのに見惚れました。

 

この状況で…本当によくぞ公演を開催してくださったものです。一刻も早く、ウクライナへ平和が訪れることを祈ります。

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