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ju-hachi

2020/1/31 輝く英国ロイヤルバレエのスター達 感想

輝く英国ロイヤルバレエのスター達、ガラ公演を観てきました。
個人的には去年夏に見られなかった高田茜さんを見たいが為にチケットを取ったリベンジ公演です。
 
キャスト表(クリックで拡大)

casts

 

 

この公演、豪華スターたちによる演目紹介と、その実演ショー、といった感じの、面白い試みの公演でした。
冒頭にはプロデューサーの小林ひかるさんの挨拶とダンサー紹介が、各踊りの前にはダンサーや指導者などによる簡単な作品紹介やリハーサル風景の映像が舞台上にスクリーンが降りてきて映像で流れます。
(実は最初、私ロイヤルシネマのチケットでもとっちゃったっけ?と不安になりました。。。)
 
ガラ公演だと一つ一つの演目やダンサーを事前に覚えきれなくて、次はなんだっけ…となることばかりなので、とてもいい作りだなと思いました。
特にコンテ作品でこういう解説を入れてもらえると、なんだかよくわからない、で終わらずに済む人が増えるのではないかと思いました。
 
ただ、個人的には豪華スターがせっかく踊るので、特にクラシックのパートには解説が入る時間すらもったいない、という気もしたのと、二階席からだと字幕が小さくて、白い背景に白い文字が映る時には特にさっぱり見えない時があったのは残念でした。
 
 
ロミオとジュリエットでは舞台セットもきちんと出てきてこだわりを感じました。
(でもバルコニーシーンのセットは、ガラ公演だと大抵簡素でイマイチなものに見えちゃうなぁ、とも思いましたが…)
 
 
ダイナミズム、と題されたpart1は、初日ということもあってかダンサー達はあまり本調子ではなさそうな感じに見えました。
初っ端、ヤスミン・ナグディとワディム・ムンタギロフの「黒鳥」、あまり印象に残らなかったです。
ムンタギロフの王子はすこぶる似合っていたな、とは思いましたが…
 
高田茜さん、ウィリアム・ブレイスウェルの「コッペリア」もイマイチぴんとこず、メリッサ・ハミルトンと平野さんの「ライモンダ」も、技術的な所で気になるところがあり、特に平野はソロで怪我でもしないかと思うぐらい調子が今一つでハラハラしてしまいました。
 

part1の中ではローレン・カスバートソンとフェデリコ・ボネッリの踊った「チャイコフスキーのパ・ド・ドゥ」が非常に良かったです。

2人とも音にのって溌剌とした躍りだったのですが、特にカスバートソンの踊りがとても良くて、明るくて華やかで、細やかな足運びも優雅でした。

カスバートソンの踊る喜びというか、エネルギーが発散されているようで、こちらもウキウキしてしまうような踊りでした。

 

(個人的に、やっと2018年マリインスキー・ガラのチャイパドで受けた衝撃が上書きされてくれました。よかった。)

 

 

 

また、part1、2ともにマヤラ・マグリとアクリ瑠嘉が踊ったコンテ作品は、解説の効果もあってか印象に残るものでした。
 
「コリュバンテスの遊戯」、「クローマ」、「Two Piews for HET(HETのための二つの小品)」というコンテは作品自体も見たことがなかったので、それを鑑賞すること自体も面白かったですし、2人とも舞台中を大きく使って、ダイナミックで、時に手足がちぐはぐな振りつけのコンテンポラリーをとても踊りこなせているな、と思いました。
 
特にマヤラ・マグリがコンテンポラリーを踊りなれているような感じで、見ごたえある踊りを見せてくれました。
 
 
 part2のパーソナル・エモーションと題されたパートは、私としては良いなと思う演目ばかりでした。
ヤスミン・ナグディとウィリアム・ブレイスウェルの「ロミオとジュリエット」は、さすが本家ロイヤルといった演技でした。
 
ローレン・カスバートソンとフェデリコ・ボネッリの「レクイエム」は、マクミランがジョン・クランコへの追悼のために振り付けたものとのことで、激しい振り付けはなく静謐な美しさでした。
2人の表現力で十分に振り付けが生かされているようで、part1に続きこのペアの踊りはとても完成度高かったです。
 
ワディム・ムンタギロフの「Dance of the Blessed Spirits(精霊の踊り)」は、冒頭のムンタギロフの紹介映像にもあった、そこはかとない哀しみを感じる踊り。
もう少し、コンテンポラリーにはみ出した踊りでもよかったのではないかと思いましたが、美しく安定した踊りでした。
 
メリッサ・ハミルトンの「ルナ」は、彼女の長く美しい手足が映える演目です。
難解な役、難解な振り付けなので、多少、ただ振りをなぞっている感があるように見えたのですが、踊り込めばもっと良く、彼女にあった演目なのではないかと思いました。
 
Part1、2通して個人的に一番好みだったのが、ラストの高田茜さんと平野亮一さんが踊ったメッセレルの「春の水」です。
平野は女性のサポートが本当に上手で、パートナーの女性が非常に安心して生き生きと踊っているように見えるので、この難しい演目のパートナーにうってつけに思いました。
また、高田さんの軽やかなステップや跳躍は、春の光で輝く水が、勢い良く流れて飛び跳ねるようでした。
怒涛の高難易度の技をバシバシと決めていくのは見ていて清々しく、特にラストのリフトは鳥肌もので、高田さんの重量が消えたような高いジャンプと、それを受け止め、支える平野さんに対する信頼感がないとできないだろうと思います。
ともすればただのサーカスのようになりそうなこの演目を、美しく魅せたのはさすがでした。
 
 
全体的に、ガラ公演だとどうしても全幕の物語が見えないのが大抵気になるのですが、今回はそういったことが少なく、映画の予告編的に物語が凝縮されたような、背景が見えるような踊りが多かったのはさすがロイヤルだなぁ、と思いました。
 
 
ホールの環境で音響がかなり悪かったのと、録音音源だったので、特にクラシックでダンサーが曲にあわせようとすると、どこか力をセーブした感じに見える時があったのが残念だったところです。
といっても、この豪華スター達が一堂に会する公演をこのお値段で見れるならば十分過ぎるし、ぜひ、また同じような公演をやって欲しいなと思います。
 
(しかし、この日は二階席はかなりガラガラのようでした。
チケットの売れ行きはどうだったのだでしょうか…)