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ju-hachi

2021/2/6 シンデレラ[NBAバレエ団] 感想

この状況下で大変貴重な新制作、ヨハン・コボー振付、世界初演の「シンデレラ」を見てきました。

 

緊急事態宣言でチケット販売が座席数の50%までに抑制されているためか、かなりチケットが取りづらい状況が続いています…

私は緊急事態宣言前に発売されていたチケットを購入できていましたが、制限後は販売停止になってしまったので、危うく見れない所でした。

販売途中で50%に達したからか、1階~3階席の半分ぐらいまで埋まって、後は空席という、すごい座席配置になっていました。

 

 

キャスト

casts

 

 

 

 入国制限により、当初主演予定の英国ロイヤルバレエのプリンシパルフランチェスカ・ヘイワードが来日できなくなったため、シンデレラは同じくロイヤルのプリンシパルの高田茜さんにキャスト変更、しかも高田さんは日本での全幕ものは初主演とのこと。

棚ぼたというか災い転じて福となすというか。

そういえば、ロイヤルの来日公演、ケガで出演されてなかったんでしたね。

 

timetable

 

幕開け前、久保芸術監督とヨハン・コボー氏の挨拶がありました。

ちょっと記憶があいまいなのですが、久保監督から、ラストが意外に思われるかもしれないがどうしてああしたのか?という話を振られるたコボー氏が、「ほんとは(見る前に)話したくないんだけど」と前置きしたうえで、「みなさんに夢を与えて、可能性がある、ということを伝えたい、人生でのヒントのようなものを伝えたい」といったようなことをおっしゃっていたかな、と。

あと、アイデアは音楽を聞いていると思い浮かんできて、繰り返し繰り返し音楽を聞いて最終的に現実にする、というようなことをおっしゃっていたように思います。

初演ということで、コボー氏もテンション高めというか、5分では言いたいことが収まらないといった感じでした。

 

ネタバレになる内容は、後にまとめて記しておくことにして、主演の高田茜さんは、(月並みなんですが)とても素晴らしかったです。

踊りももちろん上手なんですが、今回は表現力や演技の方が印象深かったので、ドラマティックな全幕もので主演を見れて本当によかったです。

1つ1つの動作がキラキラを振りまいているような踊りに、自然に目が吸い寄せられてしまって、この物語に強力な説得力を与えていました(もう"残酷"と言っていいくらい…)。

薄幸そうな、自信なさげな演技が、ご本人そのものの雰囲気にも合っているような印象もあり、とても自然で、この「シンデレラ」役には非常にお似合いだったんじゃないでしょうか。

あと、ポアントを履いた時の甲の美しさと、キラキラッとしたのが増す感じ…まさに水を得た魚!と思いました。

 

NBAバレエ団の公演はあまり観ていないのですが、かなり演劇的な演目に向いているバレエ団のような印象を受けました。

ぜひ、他の作品を見てみたいです。

継母の子供(姉妹)を演じたお二人がとても良い表情で、会場も盛り上がっていました。

女性ダンサーで背の高い方が多いんですかね?特にSwan Poster役の佐藤圭さん、すごいスタイル!でした。

あとは、バレエ教師役の峰岸千晶さんの背中がとても美しかったのが印象的です。

 

全体的に女性が目立つ作品だったので、あまり男性の踊りに印象がありませんが、Talentの宮内さんの踊りは細かなステップも端正で安定した踊りだな、という印象を受けました。

ただ、個人的に、男性陣にもうちょっと身長があるダンサーがいるといいんだけど、と思ってしまいました。。。

 

他には、舞台転換による暗転などがほぼなく、シームレスなつくりだったのが印象的でした。

あと、振り付け等に関しては、踊りと曲のはめ込み方は、割とオーソドックスな感じだったと思います。 

 

 

 

※この先、ストーリーの内容を含めたかなり細かいネタバレを書いています。未見の方はご覧にならない方が楽しめると思います。

 

 

 

 

 

新作「シンデレラ」大筋としては以下のような物語だと思いました。

パンフレットは購入してないので、個人的な解釈です。

 

 舞台は現代。バレエ教室に通う、バレエダンサーを夢見る主人公シンデレラ。バレエピアニストの継母と、継母の二人の子もシンデレラと同じバレエ教室に通う。シンデレラは、踊り出せばバレエ教師にも一目置かれる程の才能があるが、継母は我が子可愛さにがシンデレラが踊る邪魔をし、掃除や譜めくりなど、雑用をさせている。「どうせ私なんか夢のようには踊れない…」と、シンデレラは自信を失っている。

ある日のお稽古後、シンデレラは憧れのバレエダンサーとして踊る夢を見る。妖精?仙女?(バレエ教師の姿そっくり)の導きで、教室のお稽古場に貼られている公演ポスターから飛び出したダンサーたちが、シンデレラに踊りの手ほどきをし、自信を失っているシンデレラを励まし続ける。豪華な宮殿でダンサーたち(バレエ教室で踊っていた面々そっくり)が踊る中、シンデレラは"王子(キャスト上の名前は"タレント")"に見いだされて、きらびやかな衣装を身に着けて美しい夜空のもと、"王子"とともに踊る。

時計の鐘の音とともに、幸せな夢から覚めたシンデレラは、辛く苦しい現実の、いつものお稽古場にいる。でも、夢を見る前の、自信を失っていたシンデレラからは少し違う。"王子"ではなく、優しい眼差しを向けるバイオリニストと共に、シンデレラはお稽古場を後にする…。

 

事前の公演の宣伝文句にあった、「真実の愛」を見つける、というあおりから想像していた、ラブストーリーみたいなものとは違って、王子はもう、ほぼ空気でした。

シンデレラが「踊ることへの愛」を見つけた、といったことだったのかも。

 

原作の、継母に閉じ込められて、選んでくれた王子が助けてくれるのを待つシンデレラじゃなくて、自分で選んで、自分で外に出て行くシンデレラの物語でした。

面白かったです。

"「自分なんて…」と自信のない少女"が感情移入しやすいというか、一般的なシンデレラよりも身近に感じやすいかもしれないです。

 

現実の人物が夢の中で出てくる感じとか、ロイヤルの「不思議の国のアリス」に近いような気がしました。

お稽古場の「鏡」が、現実と夢の世界を繋ぐ、印象的な装置として使われていました。

あと、シンデレラの持つ大きな革の旅行鞄?も印象的でした。きっと何か象徴しているんだと思うんですが…

 

 

<<その他印象に残った部分メモ>>

◆1幕

・初っ端、お稽古場にじょうろで水をまくシンデレラ。

・17時5分前を指す時計。

・お稽古場にはMidSummer night Dream, the Swan, Ballet Russes RED 3種のポスター。(Ballet RussesのポスターのOne Week Onlyの文言にちょっと笑った。)

・最初のお稽古場の生徒、みんなポアントをはいていない。シンデレラ含めバレエシューズの踊りから始まる。

・ヴァイオリニストがいるお教室…。

・端っこで踊っていても何故か目立つという漫画のような展開を、完全に納得させられてしまう高田さんの踊り。

・ポスターからダンサーが登場!とても面白い。3人の色合いがジュエルズ。(エメラルド、ダイヤモンド、ルビーの色。衣装のつくり的にもそっくり。)

・シンデレラ、リボン無しのポアントをそのまま履く。(踊ってる間、違和感とかないんだろうか…)

・移動(場面転換)する時に鞄と一緒にじょうろも持って行こうとするシンデレラ。

・天井から色々な舞台衣装がぶら下がってくる。面白い。シンデレラは選んだ衣装に早着替え。

◆2幕

・宮殿?のような場所で舞踏会?色とりどりのカラードレスがとてもステキ。

・美しい衣装のシンデレラがでっかい革の旅行鞄を持って登場!

・ヴァイオリニストが道化みたいな感じ。

・赤いポアントを持つ王子に女性達がアピール。シンデレラは”王子”に対してという感じはなく、"踊りが楽しくて踊ってる"。王子は空気。

・自然に真ん中で踊ってしまって、王子に見いだされる展開に、全く不自然さのない高田さん。

・継母の子供たち、白鳥と黒鳥で登場。コミカルな場面。

・舞台転換後、夜空の舞台がとても、とても美しい。シンデレラが8人の男性を従え、踏み台のように駆け上がるような振り付けが象徴的に思えた。

・目覚める場面、鏡の向こうのピアニスト、バレエ教室のクラスメイトもろもろ…どんどんと現実の教室に戻っていく舞台装置。見ているこちらも何だかすごい絶望感。

・カーテンコール、シンデレラはバレエシューズ。

 

 

新作だけに、私は物語の消化に精一杯になった感があります…

あと、演じる人が違うとかなり違って見える作品なのでは?と思うので、ぜひもう一度見たいな、と思います。