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ju-hachi

2021/2/20・21 眠れる森の美女[新国立劇場バレエ団] 感想

新国立劇場バレエ団の、ウェイン・イーグリング版、眠れる森の美女を、3公演観てきました。

新国バレエの今年初の観客を入れての公演でした。

 

 

■イーグリング版眠れる森の美女についてメモ

新国立のくるみ割り人形の振り付け、本当に好みではなくて…今回の眠りも若干不安でしたが、こちらは、そこまでの苦手意識は持たなくて済みました。よかった。

以下、内容メモ。公演プログラムも参照しました。

◆全体的

・オーロラ姫の衣装、白→小花模様の青→白。

・カラボスが立ち役でなくポアントで踊る。

◆1幕

・プロローグで天の籠から降りてくるリラの精とカラボスの対立するシーン。

・式典長カタラビュートはお顔白塗り。

・妖精たちの贈り物、子役が持ってくる。鳥かご、花束?髪飾り?、ネックレス、扇子、卵型の何かの入れ物?、宝石箱?。

・妖精が6人。誠実・優美・寛容・歓び・勇敢・気品。6人目の気品の精のヴァリエーションは一般的には無い。2幕の貴婦人たちの踊りの曲を転用。曲も可愛らしくて、振り付けも好み。

・カラボス登場時、結構派手に雷鳴が鳴る。不気味なクモの乗り物で登場。背景にもクモの巣。手下がお尻を出してからかうシーン有。

◆2幕

・各国の王子は踊りほぼなし。ガーランドの踊りの最中にそっと入場し、割と空気。

・編み棒みたいなものは出ず、一貫して糸つむぎが登場。

・カラボス退場時、クモの糸を撒いて消える。

・オーロラ姫が眠った後、いばらの紗幕が下り、舞台転換。(オケもチューニング。)

・100年後、狩の貴族・村の人々の踊りのシーン、背景にずっとぶら下げられた鹿。

・王子のソロ曲は3幕で使われるサラバンド。さらっと短めの曲。

・森の妖精、緑の衣装、胸に赤のワンポイント。群舞、すごい人数で圧巻の踊り。

・オーロラ姫の目覚め後に踊られる、目覚めのパ・ド・ドゥ。ヌレエフ版だと王子のソロの曲。オーロラ姫がちょうどロミジュリのジュリエットみたいな衣装。雰囲気もロミジュリのパ・ド・ドゥのような、ここだけ異質な踊りに見えて、あまり好みではなかった。

◆3幕

・序曲的な部分からディベルティスマンを踊る人物たちも登場していく。

・"親指トムの踊り"男性ソロ。ジャンプたくさん、見どころたくさんの踊り。

・アポテオーズに「アンリ4世賛歌」(ちょっと物悲しい曲調で幕)

 

舞台セットや衣装がとても美しかった。貴族の衣装などが、青を基調に、靴や手袋に赤が使われていたりと色遣いがかなりはっきりとしているものも素敵でしたが、淡いイエローの妖精たちの衣装などもよかった。

妖精や、4人の王子たちの衣装は、それぞれ色などの特徴が違う衣装を着る作品が多いと思っていたのですが、イーグリング版はほぼ色合いが同じ衣装を着ているのも面白かったです。(妖精の衣装は、肩ひもや冠のちょっとしたところの色がそれぞれ違ったと思います。)

ただ、2幕の王子の衣装は胸開きすぎて好みじゃなかったです。。。

 

 

 

キャスト 2/20 14:00

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初日、小野絢子、福岡雄大ペア。

3公演見て、個人的に一番良かったと思ったのは、このペア。

 

小野さんが、もう、本当に完璧でした。完璧なオーロラとしか言いようがありません。

客席に、パの一つ一つで光を放って周囲の邪気を払うかのような、神々しさを感じました。

東フィルのオケがとても良かったのもあると思いますが、音楽と渾然一体となっていて、特にソロヴァリエーションの、もはや小野さんが音楽そのものみたいな踊り、最高でした。

ローズアダージョで、2回目のアチチュード・バランスでは、手をアンオーに持っていく余裕っぷり。

(唯一、ローズアダージョで、花を床に投げる直前に、4人の王子から花を受け取る部分、2人目で花を落としてしまったのが失敗らしい失敗。)

福岡さんは、2幕のヴァリエーションはちょっとイマイチ?と思ったのですが、3幕のヴァリエーションがキレキレで冴えわたっており、パ・ド・ドゥはさすがゴールデンペアという息の合った踊り、ラストのコーダでのオーロラとの踊りのシンクロ具合では、もう涙が出そうでした。

 

リラの精は木村優里さん、カラボスは本島美和さんで、本島さんのカラボスが素晴らしいのはもう予想通りでしたが、木村さん、それに負けてなかったです。

リラの精のヴァリエーションは、ロイヤルのリラの精の踊りにそっくり?のような。木村さん、ふわふわ―っと軽く、本当の妖精のよう。回転技も決まっていて、素晴らしい踊りでした。

本島さんのカラボスは怒りが強めで、面白がっている時もあるような感じの役作りに感じました。余裕の笑みさえ浮かべる、妖艶なカラボスでした。

1幕ラストのクモの乗り物に飛び乗るシーンがかっこよかった。

 

妖精のヴァリエーションは、特に気品の精の横山柊子さんの踊りがステキでした。

踊りや曲が自体が自分の好みなのもあるかもしれないですが、上体やアームスの動きがすごくよかったと思いました。

 

この回、100年後のシーンで、ガリソン(王子の友人)の演技がとてもよかった。「え?俺?」みたいな声が、舞台から聞こえて来たような気がしました。

 

3幕は、宝石の踊り、細かい跳躍の続くパなどがいっぱいで見ごたえたっぷりでした。

女性3人のトロワは柴山さんが光っているなぁ、と思いました。顔、ポードブラが良くつけられてて、とてもよかった。ゴールドの速水さんは、相変わらず跳躍の跳びっぷりが、何回見てもすごいなぁと思ってしまいました。宝石の衣装は、女性が、ゴールドを基調に裾の部分が縞模様で色違い、男性は白い衣装?でした。

青い鳥とフロリナ王女は奥村さんと池田さんで、青い鳥の奥村さんの柔らかいアームスや背中の動きがとてもよかった。あと、池田さんの目線のやり方が、とても素敵になったなぁ、と思いました。

赤ずきんと狼の踊り、五月女さんのバネがすごかった。狼の被り物の顔が結構コミカルでした。

親指トムの踊りも瞬間芸的な見どころだらけの通りでした。井澤諒さん、良かったです。

 

timetable

 

 

キャスト 2/21 13:00

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鑑賞2回目、木村優里、奥村康祐ペア。

本当は井澤さんがデジレ王子にキャスティングされていた所、ケガのため奥村さんにキャストチェンジ。

井澤さん、大丈夫だろうか…。

木村さんも、前日はリラの精、この日主役で初合わせの奥村さんと主役を踊り、ソワレもリラの精、となかなかハードでちょっと心配していましたが、全くの杞憂でした。

 

木村さん、他の回のオーロラにはあまり感じなかった、初々しさと可憐さがあって、ずっと可愛らしい姫でした。

一つ一つのパの度に、あたりに小花をたくさん咲かせるようなイメージ。

ローズアダージョはアチチュード・バランスでアンオーにこそしませんでしたが、危なげのない踊りでした。

貫禄、というのとは少し違うかもしれませんが、主役として舞台の中央に立って輝くエネルギーを感じました。

奥村さんのデジレ王子、すごくよかったので、本当に見れてよかったな、と思いました。

もとからキャストに入れといてくれたらよかったのに。

ソロの上半身の美しさに惚れ惚れしました。

心配していたパ・ド・ドゥも全く、初合わせを感じさせず。

奥村王子がオーロラ姫を見るまなざしが優しくて、すごく愛を感じる3幕パ・ド・ドゥでした。

 

この回、リラの精の細田さんと、カラボスの寺田さんが非常に良くて、この2人のおかげでより印象的な公演になったと思います。

登場のシーン、ぐっと手を握りあってカラボスとリラが対立。

(木村さんと本島さんの時は手の平を合わせていただけだったと思う。)

細田さんのリラの精、とっても音楽性があって、柔らかいアームスの動きがとても優美で美しかったです。

カラボスの寺田さん、名演だと思いました。本島さんのカラボスは怒りを強く感じ、面白がるような演技も混ざったような気がしましたが、寺田さんのカラボスは深い恨みが強力に感じられる演技だったように思います。カっ、と目を見開く表情もとても怖かった。

(2幕、オーロラが倒れた後のシーン、最後にカラボスが撒くクモの糸が、最初から少し出てしまっていて、足に絡まりやしないかとちょっとソワソワしたのですが、大丈夫でよかったです…)

バランスが良いというか、2元的な対立が際立っていたと感じました。

 

この回は初日とはほぼ、どの踊りもダンサーが違います。

妖精のヴァリエーション、池田さんの寛容の精の踊りが良かったです。上体の沈みっぷり、とても立体的に見える体の使い方でした。

廣川みくりさんの歓びの精の踊りも、初日の方よりは手のパタパタ具合とか、飛び跳ね感などが良かったと思いました。

プログラムを見た時は、てっきり五月女さんが歓びの精の踊りを踊るのだと思っていたのですが、勇敢の精の踊り、すごくピッタリでした。体が沈んでからの動き、パの移動距離、身体能力が光っていました。

 

3幕のディベルティスマンは、長靴を履いた猫の宇賀さんがすごくよかった!いちいち仕草がコミカルで、動きも俊敏で本当に猫のよう。とても上手でした。もう一回見たい。

青い鳥とフロリナ王女は、フロリナ王女の柴山さんがすごくこの踊りに合っていたと思いました。私はとても好みの踊り方。

青い鳥は速水さんで、跳躍が元気いっぱい。アントルシャシスもすごい高さで、ブリゼ・ボレは音楽もすっごくスローで滞空時間がとても長かった。

でも、上半身に柔らかさが無くてちょっと下半身とちぐはぐに見えて、踊りとしては宝石を踊っていた時の方が合っていたな…と思いました。

 

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キャスト 2/21 18:30

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鑑賞最後、3回目、米沢唯、渡邊峻郁ペア。

3回目になってやっと、コールドの踊りにすごい量のソリストたちが動員されているところまで見れるようになりました。なんて豪華。

 

米沢さんのオーロラは研ぎ澄まされた宝石のような輝きを放っていました。

パがクリアだから、クラシックな踊りは本当に絶品。

ローズアダージョのアチチュード・バランス、2回目は余裕のアンオーを交え、1幕のオーロラソロでは、1回転、2回転、3回転と、徐々に回転回数を増やすことまで。(他の回ではなかったはず…)カラボスから花束を受け取る直前のパもうなる程ステキでしたが、特に森のシーンのオーロラソロが素晴らしかった。ランベルセの背中やポードブラが抜群に美しかったです。

3幕は、可愛らしさと無邪気さと、気品とが同居している、最強の姫の中の姫、という感じ。

渡邊さんは、2幕の王子の衣装が中では一番お似合いに感じました。最近ずっと、不安な気持ちで見てしまうのが抜けないのですが、3幕の王子ソロはとてもよかったです。

 

ヴァリエーション等はほぼ初日キャストと変わらないので割愛。

変わらず素晴らしかったです。

 

 

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公演の内容以外の事としては、チケットは販売制限があったので、取るのにかなり苦労しました…。

座席数は50%、市松模様ではない配置で、1階から、大体3階くらいまでの座席がぎっちり埋まっている、といった、様子、緊急事態宣言中ということで、売店で飲み物や食べ物がの販売は休止、飲食もロビー・ホワイエでは控える、という形でした。

そういえば、お手洗いの便座を拭くシート、なくなっていました。あと、蓋をしめてから流して、の掲示も消えていたような…?

 

どの回もそれぞれ本当に素晴らしかったので、苦労してチケット取った甲斐がありました。

全部見終わった時は、あまりの興奮に目が冴えて、なかなか眠れませんでした。

日本国内でこんな公演が見られるなんて、本当に幸せだ、と思います。

それぞれの回の主役たちの踊りももちろん絶品でしたが、今回は特にヴァリエーションを踊るダンサーたち、1人1人それぞれの個性が光っているというか、それぞれにニュアンスがあって、観ていて非常に面白かったです。

あと、東フィルのオーケストラが相変わらず良かった。序曲の勢いのある演奏、永遠に聞いていたかったです。