先週のAプロに続き、Bプロを鑑賞しました。
Bプロはコンテンポラリーな作品が多くて、Aプロよりより一層面白かったです。
キャスト
「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール
菅井円加、ダニール・シムキン
2人ともかっこよくてキレキレのグラン・パ・クラシックでした。特に菅井さんの踊りのクリーンさがとても良かったです。どこまでも伸びていってしまいそうな手足、身体能力が一層際立って見えたような気がしました。あと、背中の筋肉が凄くて、そこもついつい注目してしまいました。ダニール・シムキンも、跳躍からピタっと地面に吸い付くように止まる感じがたまりませんでした。お衣装が黒のキラキラしたものでそれも素敵でした。
「スティル・オブ・キング」
振付:ヨルマ・エロ
音楽:フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
マルセロ・ゴメス
すごくよかったです。どこかコミカルなような表情と動きで、動きの動と静、パーツごとの動き、要所要所でピタっと決まるポーズ…見惚れました。一つ一つの筋肉の筋が見えるような、"完成されている"と感じてしまうような凄まじい肉体が生み出す、まるで何か違う生き物のような気さえしてきてしまうような、滑らかでどこか優雅にさえ感じる動き…魅入ってしまいました。
「トゥー・ルームズ」
振付:イリヤ・ジヴォイ
音楽:マックス・リヒター
マリーヤ・アレクサンドロワ、ヴラディスラフ・ ラントラートフ
ロシア組こそコンテンポラリーを踊るとめちゃくちゃに映えると思います。人間の身体能力の限界を見るような、こういう演目がこの2人で見ることができてすごく良かったです。舞台上に照明で2つの四角いスペースが映し出され、それぞれにダンサーが。その四角形の中でそれぞれ踊る2人。その内、その四角形は一つになってパ・ド・ドゥになります。そのうち、背景に何か文字のような映像が映し出されるのですが、ダンサーがまるでその背景の一部のように見えて、映像効果と合わさった動きがなんだか面白かったと思いました。
「白鳥の湖」より 黒鳥のパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
エリサ・バデネス、ワディム・ムンタギロフ
うーん、イマイチでした…。2人の目指す王子と黒鳥がなんとなくずれてるというか…。ワディムはもっと上品な王子が合うと思うんですが、エリサ・バデネスのぴちぴち元気いっぱいな感じの、奔放な姫の黒鳥というようなイメージにワディムが沿ってきた(しかし沿いきれてはいないような)感じで、それがイマイチ。ワディム・ムンタギロフのサポートは良かったし、踊りは良かったのですが…。
追悼 カルラ・フラッチ、パトリック・デュポン(映像)
てっきりAプロと同じ映像が流れるの思っていたら、違う映像でした。カルラ・フラッチは「シェヘラザード」のゾベイダと「レ・シルフィード」の映像だったと思います。ゾベイダも良かったんですけど、やっぱりシルフィードのなんとも言えない軽さが素晴らしかったです。
パトリック・デュポンはゲオルグ・ヤングとの「サロメ」だったと思います。
こちらもAプロと同様、映像終了後は会場からは拍手が。
「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
オリガ・スミルノワ、ウラジーミル・シクリャローフ
いやー、良かったです。やっぱりこの2人は相性がいいのかも。この演目の女性は、手が長いと踊りが非常に映えると思うのですが、スミルノワの手の動きが凄く美しくて良かったです。パリ・オペ組の「ダイヤモンド」と比べると、より高貴さを感じるような気がして、大分印象が違いました。衣装も、パリ・オペ組よりキラキラ度抑え目。
「3つのプレリュード」
振付:ベン・スティーヴンソン
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ
アマンディーヌ・アルビッソン、マチュー・ガニオ
良かったです。タイトルで想像していたものよりは静かで、暗い舞台の中で踊られる演目でした。踊られた3種類の踊りのなかでは1番最初の、バーレッスンのような風景での踊りが一番良かったです。バー越しに、まるでレッスン風景のように踊る2人、バーを越えてリフト、バーの上に乗っかったりといった振り付けでした。2人ともとてもラインが美しくて見とれました。アマンディーヌ・アルビッソンは、どちらかというと古典よりもこういう演目の方がより良いような気がします。
「海賊」
オニール八菜、マチアス・エイマン
そりゃあ悪くはないだろうけど、なんでマチアス・エイマンが海賊…?と思っていたのですが、想像以上に良かったです。むしろこんな機会でもなければ彼の海賊のアリなんて見られなかったかもしれませんから、逆にラッキーだったかも。ア・ラ・スゴンドターンなどの技巧も素晴らしかったですし、とってもエレガントで、Aプロのキム・キミンのアリとはまた違った素晴らしさで、見ることができて本当に良かったと思いました。
この日のオニール八菜さんはかなり不調で、踏みはずしたり回転崩れてしまったりしていました。ケガしてなくてよかったです。バランセはとても優雅で見惚れました。
衣装の色が濃い目の青?あまり見かけないような色で、パリ・オペだとこうなるのかぁ、と思ったりしました。
「椅子」
振付:モーリス・ベジャール(ウージェーヌ・イヨネスコに基づく)
音楽:リヒャルト・ワーグナー
アレッサンドラ・フェリ、ジル・ロマン
たくさんの椅子が舞台上に置かれ、天井からもつるされている中、セリフを、ほとんど叫ぶような形で言いながら、歩き周り、椅子を並べたりするジル・ロマン。椅子を引きずって出てきて、縮こまったり、まるで子供のようにも見えるアレッサンドラ・フェリ…。95歳の老人と94歳の老婦人という設定らしく、しゃべっているセリフの翻訳まで配布されたものの、なかなか抽象的で…。結局、どんな筋なんだかよくわからなかったのですが、何故だか目が離せず、印象に残りました。年老いて、老婦人は記憶を失っていっており、老人の方はずっと寄り添って、目に見えない訪れる客に向かって人生を振り返っているような感じかなぁ…と、勝手に思って観ていました。4部あるBプロの中の1部をまるまる使って上演された大作でした。
「ロミオとジュリエット」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
ドロテ・ジルベール、ユーゴ・マルシャン
ヌレエフ版は本当に忙しない振り付けというか、ステップが鬼だし、床は使うし、踊るのが大変だと思うのですが、この2人、さすが息がぴったりですごく良かったです。Aプロの「オネーギン」がこの2人で見れなかったのが、より一層残念に思える程、息が止まるような、切なくなるような熱演でした。
「シャル・ウィ・ダンス?」より "アイ・ガット・リズム"
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ジョージ・ガーシュウィン
菅井円加、アレクサンドル・トルーシュ
男女2人ともシルクハットで燕尾服、バレエよりもさながらミュージカルを見ているような踊り。2人とも楽しそうに笑顔で踊っていて、みていてこちらもウキウキとしてしまうような演目でした。菅井さんの踊りはもう何度も見ているはずなのに、何度だって感動してしまいます。軽やかでキレがあって、アレクサンドル・トルーシュとピッタリのユニゾン部分が素晴らしかったです。
「悪夢」
振付:マルコ・ゲッケ
音楽:キース・ジャレット、レディー・ガガ
エリサ・バデネス、フリーデマン・フォーゲル
Aプロの「オネーギン」よりとても良かったです。コンテンポラリーの方がより"らしい"踊りの感じに見えました。最初の、丸い照明の中で一人踊るフリーデマン・フォーゲルの肉体がとても、とても美しくてとても印象的でした。マッチを付けては消し、を繰り返す部分があったと思うのですが、あまり演目の筋や意味としては分からず…しかし、見ていてとても面白かったです。
「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
エカテリーナ・クリサノワ、キム・キミン
世界バレエフェスと言えば、という演目。ラストに相応しい素晴らしいパフォーマンスでした。
クリサノワがとても良かったです。背中と腕の一体感があって、すごく美しかったと思いました。さらーっとなんでもない顔で、超絶細かいパドブレを入れて、早い足捌きも優雅で、フェッテは2回転を入れていたし、素晴らしかったです。キム・キミンはAプロに続きダイナミックな跳躍で会場をわかせまくっていました。アリよりはバジルを踊っている時の方がマリインスキーらしさを感じられる踊りをしていたような気がしました。
ラストは今回も花火のプロジェクションマッピングでした。
見れて良かったです。そして、良かったのですが…やっぱり、世の中の情勢を考えると心の底から盛り上がったり、楽しい気持ちにはなれなかったのが非常に残念でした。
また3年後は、マスクもなく、心置きなくバレエを純粋に楽しめるような環境になっていることを、心から祈ります。