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ju-hachi

2023/6/17マチネ, 6/18 白鳥の湖[新国立劇場バレエ団] 感想

2022/2023シーズンを締めくくるピーター・ライト版「白鳥の湖」を観てきました。いやー、あっという間のシーズン終了ですね。

公演前に寺田さんの前公演での退団が発表されたのは悲しかった…「夏の夜の夢」の演技、とっても良かったのにあれで最後だったなんて…せめて事前に発表していただきたかったなぁ…

一方、6/17夜公演では速水さんと柴山さんのプリンシパル昇進が舞台上で発表されたそうで、めでたい!吉田監督自ら舞台上での発表だったのが見られなかったのが残念でした。柴山さんの白鳥をなんだかんだ見ていなかったのも悔やまれます。次回こそ…

 

この公演は、なんといっても衝撃の吉田朱里さんのオデット/オディールデビュー!が見たかったのでした。シーズンラストにして大抜擢の主役キャストが誕生するとは思っておりませんでした…いやーびっくり。木村優里さんのケガ降板がとっても残念ではありましたが、硬直化していた新国の主演キャストに思いもかけない新風が巻き起こったことで、ちょっとワクワクしながら吉田さんを鑑賞しに行ったのでした。

 

2023/6/17マチネ、オデット/オディールは吉田朱里さん、ジークフリード王子は渡邊峻郁さん。

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吉田さん、見事なオデット/オディールでした。素晴らしかった!伸びしろがありつつも、現状でも惹きつけられる踊りの魅力も、これから中央で踊れるだろうなと思うような輝きも持っている、新国の圧倒的ツートップが失われた先を少し安心できるような、新たな主演ダンサーが誕生したようで喜ばしい限りでした。

彼女は、圧倒的にオデットが良かったです。こんなにオデットがハマる人、大変に貴重なのではないでしょうか。長身で手足が長くて細くて、ある瞬間ハマったポーズがものすごーく美しいのが大変に魅力的でした。あのアラベスクの、パンシェの時の脚よ…!オディールの時のランベルセのポーズにも思わずため息をついちゃいました。あと、オディールのソロの時、序盤でちょっと崩れてしまったのですが、その後ぐだぐだに崩れずに持ち直していたのも強さを感じました。

もちろん、他の主演のプリンシパル達と比べるとまだまだで、粗削りで未熟な部分が多々あるとは思いました。今回は振りをなぞるのに終始していた感はぬぐえませんでしたし、白鳥の踊りとしては肩と背中と指先の動きがもっと滑らかになるといいような気もしましたし、オディールで結構難ありの部分が…とか、色々思いはしましたけど、それでも、代打で白鳥の湖の主演を入団2年目で踊るなんて、私は想像しただけでめちゃくちゃ胃が痛くなりそうな状況で、ここまでの完成度で仕上げてきちんと踊りきったのはとんでもないことでは…!これからが楽しみな、素晴らしく瑞々しいデビューでした。

この公演、ペアの渡邊王子が終始支えている感じだったのも個人的にツボでした。オケも随分丁寧に彼女の踊りに合わせて支えているような感じがして、自分もなんだか親戚のおばちゃんの気持ちで応援しながら見るような感じになっちゃって、妙に感動して最後は泣いちゃいました。

渡邊王子は前述のとおり、丁寧なサポートが光りましたし、ソロもよかったですね。彼の、肩、脇、背中の動き、体全体が一体となった力みがないような雑味のない踊りがとても好きです。どんどん踊りが洗練されていて、相手ペアを支えるプリンシパルになっているのが素晴らしい。

ベンノの中島さんは、ニコニコで可愛らしかったですね。渡邊王子と並ぶと2人ともあまりにキラキラしていて美しかった…。目が浄化されるようでした。でもちょっと中島さんはベンノっぽくないんですよね。見た目がもう王子すぎるのがいけないんでしょうか。。。

他に印象に残った所では、五月女さんのイタリア王女の踊りがもう神がかってましたね、個人的に完璧と思いました。まるで重力がないかのような軽やかさ。ミリ宙に浮いてるんじゃないか?と思う程で、更に細かなステップの踊りだけど全ての音ハメが気持ちよくて、大変素晴らしかったです。あと、2羽の白鳥の花形さんも目を惹く踊りでした。全く力みなくバットマンの足がとんでもなく高く上がっていて…腕肩背中と可動域が1人だけ違うような感じ。凛としつつも優雅さがあるような踊りでとてもよかったです。他の踊りもぜひたくさん見てみたい。

(そういえば、2幕の各国の踊りの時、後ろの階段の所で剣を掲げ持っている人がいるのに今回気が付きました。)

 

タイムテーブル

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ラストの千穐楽公演、オデット/オディールは小野絢子さん、ジークフリード王子は奥村康祐さん。

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盤石の主演、充実の公演でした。

まずは小野さんの物語を語るパワーのすさまじさを感じました。2幕のパ・ド・ドゥ、オデットが徐々に王子に心を許し絆されていくような、2人が気持ちを深めていくような過程が目に見えて感じられて、じんときました。そして、3幕オディールの別人っぷりたるや。もう目つきが違うんですもん。もう王子をじらすじらす、こんなのされちゃったら王子は夢中になっちゃうね、どうしようもないね!と思わされました。ラストの高笑いの演技は身震いしちゃいました。物語の重厚さを作り出しながら踊りも美しいというのがまた素晴らしい。常に手や足が動き続けてただの一瞬も止まることがなく、音との一体感もこの上なかったです。

奥村王子は、ちょっとソロの踊りが不調だったような気がしましたが、大崩れなく、小野さんと共にとても演技が良くって、お2人の相乗効果だと思うのですが、とてもドラマを感じました。とてもバランスが取れていて相性が良いのかなと改めて思いました。

木下さんのベンノはもうハマり役ですね…トロワのソロも安定していてすごく美しかった。脇で光るタイプかなぁとは思いつつも、個人的には今一番主演が見てみたい人かもしれません。(ドンキでバジルとか似合いそうなんですけど、キャスティングされたりしないかなぁ…)

個人的に、この公演はキャスト陣の身長とかバランスが良く、特に物語に集中できたな、と感じた気がしますが、前回初演の時のクルティザンヌは身長などのバランスが取れてなかった回があった気がしますが、奥田・池田ペアと、木下さんとのトロワは、バランスもよくとても一体感がありました。2羽の白鳥もバランスよく、”2羽”感があったのが良かったです。

他に印象的だったのは、ナポリの踊りの福田さんと小野寺さんの弾けっぷりと、あと、ポーランド王女の直塚さんの踊りがとてもスケールが大きかった所です。ポーランド王女のバリエーション、舞台上を跳びまくるので、いつ見ても転ぶのでは…!?とヒヤッとする瞬間がありますし、ステップも滅茶苦茶難しいと思うんですが、直塚さん、あのテンポであの跳躍を繰り出すのは見事だなと思いました。ハンガリー王女の廣川さんも自信たっぷりな王女感がありつつ、魅せる踊りに惹かれました。

 

タイムテーブル

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吉田オデットに興奮して、食べる気がなかったのにノリで幕間に食べた白鳥型シュークリーム。おいしかったです。とっても人気で行列でした。

黒鳥の方のビターチョコ味がお気に入り。

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